二王子岳

2002年6月23日、単独

コースタイム
7:23二王子神社発-8:07一王子通過-8:35定高山(独標)通過-9:15油こぼし通過-9:45山頂着10:00発-10:53定高山(独標)通過-11:15一王子通過-11:55二王子神社着

 前月末より苦しめられてきた腰痛もよくなり、背中の一部に違和感が残るものの荷物を軽くし背筋を伸ばして歩けば山も登れそうになってきた。前日角田山に登っても大丈夫だったので、この日は通いなれた二王子岳に登って試してみることにした。

 二王子神社に着く頃には雨が降り出してきた。雨具を着て歩き出す。荷を軽くするためこの日はデイバッグに少量の行動食などの軽装備だ。
 登山道は泥道になり、がに股の私はズボンの内側が泥だらけになってしまう。
 二合目の水場で少し水を飲んでみた、雨の味がしてまずい。
 一王子はいつもの通り神社へは寄らず、直接小屋のほうに抜ける道を通った。その途中に山肌から横に向かっていくつも木が伸びているが、ひときわ長くホウの木が伸びていて、大きな葉がまるでプロペラのように見えた。このあたりの森ではホウの木の葉が一番大きい。春から今までの森の景色を早送りして見る事が出来ればきっとすごい勢いで葉が大きくなっていることだろう。
 一王子で数人の登山者を追い越した。時間を記録しただけでそのまま先に進んだ。
 周囲はガス、天気は雨、景色が見えないし何度も歩いた慣れた道だったので、考え事をしながら登っていった。
 ホウの木の事を考えていた。
 ホウは村上の伝統工芸「村上堆朱」の原木として使われている。しかし、その木材はかつて朝日村の豊かな森林に頼っていたが、現在もそうなのだろうか。県内の林業の情勢を考えると、輸入材に頼っているかもしれない。
 そういえば、ブナ林ではもちろんブナが一番大きな顔をしているが、漆器や家具、建築の材料としてはブナは不向きで、トチやホウが多く使われている。また、ブナを伐採した後に杉を植えているところも多い。ブナを木無と書くのは使い道の無い木という意味もあるのかもしれない。
 以前村松町の家具職人の所にお邪魔して、家具の話を聞いたことがある。
 家具の材料になる木は森ごと育てられ、その中からふさわしい木を選んで切、何年もかけて乾燥させてから家具を作る。その家具はまた何代にも亘って衣服を守っていくという話だった。せかせか動いている私にはとても次元の違う話だった。しかし、その家具屋さんも廃業されて久しい。
 
 通称独標と呼ばれている定高山の登りの部分は登山道が深くえぐれていたが、土嚢を使った階段が出来ていた。登山道整備は大変な仕事だと思う。整備された方に心でお礼を言った。
 独標を過ぎると道端に可愛い花が咲いていた。花の名前が分からない、花の名前をもっと覚えたいと思った。
 油こぼしを過ぎると登山道脇にヒメサユリが咲き始めていた。インターネットの山仲間からヒメサユリの報告を聞く度に山に行きたくなっていたのだ。そして、やっと腰が良くなりヒメサユリに出会うことが出来た。
 以前テレビのニュースのトピックスでヒメサユリの事が話題になっていた。ヒメサユリは新潟、山形、福島の三県の県境付近にだけ咲く希少種で、非常に限られた条件でしか咲かないことから、このまま温暖化が進むと絶滅する恐れがあると言っていた。大きな花に似合わないデリケートな草花のようだ。
 登山道脇には依然可愛い花々が彩りを添えている。ニッコウキスゲも数株見つけた。
 
 遭難碑がある辺りは残雪に覆われていた。ふと右手の藪を見るとミズバショウが咲いているのを見つけた。何度も二王子に通っているが、このあたりにミズバショウが咲くのを知ったのは初めてだ。ちょっと足を踏み入れてみると、小さな池があり、その池のほとりにミズバショウが可憐な花を付けていた。池の中にはおびただしい数のカエルの卵があった。カエルも数匹池の中で動いていた。通いなれた山にも初めて見つけるものはあるものだ。
 そこからも、ヒメサユリを初めとした花々が登山道に彩を添えていた。そして、山頂の広場もヒメサユリに囲まれていた。濃いガスの為、この山の名物の雄大な展望はこの日は見る事が出来なかった。寒かったので小屋に入った。天気が悪く時間が早いためか山頂には誰もいない。
 軽く食事をして、衝撃がかかる下りで腰痛が出ないようにコルセットを装着した。

 下りは腰に負担がかからないように注意しながら下っていった。腰は最後まで大丈夫のようだった。
 時折雨が上がったが、ほとんど雨具は着たままで行動した。下山途中、多くの人とすれ違った。久しぶりの山で気分がよく、鼻歌が出てくる。思ったより早い時間に登山口に帰ってきた。
 どうやら、荷を軽くすれば腰はきつくならないようだ。これからも体をいたわりながら山と付き合っていきたいと思う。

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