大鳥沢〜前毛猛山(途中撤退)

2002年7月21日、単独

コースタイム
8:28入渓地点発-8:45 20m滝下-10:30 1047mピーク着(稜線偵察)11:00発-12:38六十里越-12:55入渓地点着

 越後と会津を結ぶ六十里越と枝折峠の間の山塊を毛猛山塊と呼ぶ。
 山塊南方の未丈ガ岳を除きこの山塊には登山道が無く、そればかりか、東を只見川水系の田子倉ダム、大鳥ダム、奥只見ダム。西を黒又川水系のダム湖にはさまれ、まるで要塞のごとく容易に近づけない。
 25千図に記載されている点線の道は既に自然に帰していると聞く。
 この毛猛山塊を狙える時期は残雪期しかなく、それもよほど好条件が重ならなければ敗退してしまう山だ。
 私はかねてからその機会を伺っていたがチャンスに恵まれなかった。
 そこへ、山仲間のふうた氏と地元の浅井氏が5月上旬、足沢山〜太郎助山〜毛猛山〜前毛猛と縦走した。その報告の中に、前毛猛から少し六十里越方向に向かったところに、大鳥沢へ下降する踏み跡があったと記録されていた。もし。大鳥沢沿いにしっかりしたルートがあれば、夏でも前毛猛山までは容易に行ける。そう考えていたところに、浅井氏が途中まで大鳥沢を遡行した記録を自らのHPに掲載した。長靴で歩けるのなら簡単な沢だろうと、大鳥沢を往復して、最後のつめの手前より県境稜線に出て、前毛猛を狙おうと今回の山行を計画した。

 明方雨が降ったが、天気予報は曇り。降水確率は低い。
 関東より西では前日に梅雨明け宣言が出されたが、新潟県地方はまだ梅雨明けはしていない。しかし、梅雨前線の活動は弱く、入渓地点の六十里トンネル手前に着く頃は、雨は上がっていた。
 渓流シューズなど沢登りの装備で入渓した。ザックの中には懸垂下降用に8mm×30mのロープも入っている。
 六十里トンネルの手前二つ目のカーブの所が入渓地点だ。踏み跡が伸びていて大鳥沢と枝沢の出合付近で沢に入った。
 沢の水量はそれほど多くなく、沢身をどんどん遡行できる。両岸から木が伸びていて、緑のトンネルのようだ。
 小さい滝がいくつも現れ、その度に巻道が岸についている。このルートは良く使われているルートだということがうかがいしれる。小さい釜や淵にも全て巻道がある。私は巻き道を通らず全て直登した。釜や淵も深くても太腿くらいだった。
 久しぶりの沢登りの感覚はとてもいい。適度な水量と簡単な滝の連続で気分は上々だ。
 入渓して15分ほどで、浅井氏のHPに掲載されている。大滝に出会った。落差は20m位だろうか、3段になっている。見たところ直登出来そうなので、直登した。1段目は左側の流れの中を登り、2段目は落差が小さいので流れの右側を登り、3段目は流れの右側のクラック沿いを登り、落ち口付近の足場が悪かったので、最後はそのまま右側の岩壁をよじ登った。登ってみると更にその上にもう一段滝があり、そのまま岩壁を登って藪の中をトラバースして、その滝を高巻いた。
 それからしばらくは、2m〜6m程度の直登出来る滝がどんどん現れ、楽しい沢登りをすることが出来た。
 標高810m付近の二股を過ぎてすぐ、とても登れそうに無い滝が現れた。その上、高巻こうにも両岸とも草つきの急斜面で、かなり大きく高巻しなければ危険な状態だった。
 時間は9時半頃だったと思う。そこで、この日の目標は前毛猛のピークハントなので、予定より早いが県境稜線に上がることにした。本来なら標高970m付近まで沢を遡行して、そこから県境稜線に上がる予定だったが、単独行なので安全なルートへ早めに移動することにしたのだ
 しかし、私はついうっかり、ここで水の補給をするのを忘れてしまった。状況からして、沢を下るのは危険が多い、帰路は県境稜線を戻ったほうがベターな選択だ。なのに、この時点では登るのに気を取られて水の補給を忘れてしまったのだ。
 稜線までの登りは辛い登りだった。厳しい藪こぎを強いられそのうえ登りが急だ。どうしても腕に力が入ってしまう。稜線に出たときは疲れきってしまった。
 先ほどまで高曇だった空が、いつの間にか雲が下がり、すっかりガスに覆われてしまった。周りの地形がほとんど見えなかったが、足元の田子倉湖の形より、1047mピーク上にいることが確認できた。
 登っている途中に水がペットボトルのお茶200ccしかないことに気づいていた。行動食を口にするが、水分補給は限られている。稜線上にはうっすらと踏み跡はあったが、藪こぎは必至だ。おそらく現在地点から前毛猛までの往復は2時間以上かかるだろう、その上、六十里越まで藪を進まなければならない。200ccの水では全く足りない。ふうた氏などの報告にある沢へ下降する道をたどって沢に下りたとしても、沢を下るのは危険が多すぎる。撤退することにした。
 六十里へ向かう稜線には薄いがはっきりとした踏み跡があった。藪は腰くらいの高さの低木が主体だ。晴れていればさぞ景色のいい稜線だろう。会津側が切れ落ちているので注意しながら進んだ。
 小さい登り返しを交えながら徐々に高度を下げていく。やがて背丈を越える潅木帯に入っていった。短い間隔でピンクのテープが付けられていて心強い。踏み跡は所々不明瞭になるが、六十里越えの道まで続いていた。登山道に出る直前に雨量観測小屋があった。突然の人工物の登場で少々驚いた。
 雨上がりの濡れた藪こぎですっかり衣服はびしょ濡れになってしまった。
 六十里越の登山道は2週間前に通ったばかりだ。登山道のありがたさが良く分かる。
 入渓地点に戻り、濡れた衣服を全て着替えて帰路についた。
 前毛猛をアタックするのなら、六十里越から県境稜線沿いに進むのがやはり一番いいだろう。
 帰路車を運転しながら、登ることの出来なかった滝はやはり大きく高巻いてしばらく沢身を進み、沢が大きく県境稜線に近づいたところで稜線に出れば前毛猛まで登れただろうかと考えていた。
 やはり前毛猛とはいえ毛猛山塊の山である。容易には人を寄せ付けないようだ。

3段20mの滝、直登した 稜線へ上がることを決意させた滝、落差10mくらいかな

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