荒川角楢沢下ノ沢(祝瓶山)

2002年8月18日〜19日、ふうたさん、吉田

コースタイム
8/18
5:00豊栄市発=7:20針生平(林道終点)発-8:02角楢小屋着8:15発(入渓)-9:05二股、下ノ沢に入る-11:53標高880m付近着(昼食)12:43発-15:10登山道に出る-15:23祝瓶山山頂着(ツェルトで幕営)
8/19
6:20祝瓶山発-8:00分岐点-8:20針生平着=10:30豊栄市着

 この日はかねてから山仲間のふうたさんと谷川連峰の沢へ行こうと約束していた。ところが、南海上に台風が接近しており谷川連峰付近は18日より雨になるとの予報があり、前日急遽予定を変更して朝日方面に行くことになった。ガイドブックを調べて祝瓶山に突き上げる角楢沢下ノ沢に行くことにした。

 豊栄の道の駅でふうたさんと合流して登山口の山形県小国町針生平(はんなりたい)を目指す。ふうたさんはこれまで針生より大朝日や祝瓶山は登っているので、道は知っていた。
 林道終点に着き車から下りると早速アブがやってきた。虫除けスプレーを体に吹きつけ防護する。
 入渓地点の角楢小屋までは荒川沿いのブナ林の中を歩く道だ。途中三箇所ほど肝を冷やさせるようなつり橋を渡る。
 三本目のつり橋を渡り高台に上がると角楢小屋はあった。ここで遡行の準備をした。
 小屋の脇の踏み跡をたどって角楢沢に降り立った。最初から釜を持った滝があり腰まで水に漬かる。
 左岸側に山抜けの後のある土砂崩れの後を越えると、素晴らしいゴルジュが始まった。両岸は苔むした岩壁、その上に緑のブナ林を見上げ、緑の廊下といった感じだ。
 大きな釜で数メートル泳ぐ場面もあった。また、釜から上がるときに足場がなく、ふうたさんを押し上げて、私はスリングで引っ張ってもらった場面もあった。
 ガイドブックでは沢のグレードは3級である。、ふたりで協力しながらの遡行が続いた。
 二股に着き、地形図とガイドブックの遡行図を見て、下ノ沢出合と確信し、下ノ沢に入る。
 下ノ沢に入ると一気に水量は減るが、相変わらず素晴らしい緑の廊下は続いていた。
 間もなく10m×2段の滝が現れた。二人でいろいろ協議するが、まずは直登を試みることにした。ガイドブックでは右岸を高巻く事になっている。下段の下1/3の所にバンドが横切っており、左壁から取り付いてバンド沿いに右壁へ行き、右壁を直登する作戦を立てた。まずはふうたさんがトライしてみたが、滝の水圧がすごく水線を越えられずへつりながら引き返してきた。その後、私がトライしたがやはり水圧がひどくとても越えられるものではなかった。私はその場から釜に飛び込んで戻ってきた。
 高巻くことにしたが取り付き点が良くない。ふうたさんの肩を借りて攀じ登り、途中からお助け紐を出してふうたさんを引っ張りあげた。しかし、ある程度登るとかなり急になり足元が悪くとても登れない。左へトラバースして登ろうとするが、腕が張って力が出ない。ふうたさんに先に登ってもらい、その間に潅木に支点をとってビレイし腕を休めた。ふうたさんからザイルを出してもらって、攀じ登った。攀じ登ったところから水平にトラバースし、上段の滝の右岸にあった楢の木を目指して進み、そこから沢身に降りた。結局この滝に直登のトライの時間を含めて1時間も費やしてしまった。きつい高巻は体力を消耗する。一気にばてた。
 それからは少しペースを押さえ気味にしてゆっくりと登っていった。ガイドブックに巻くように書いてあった滝も、直登した。
 相変わらずゴルジュが断続的に現れ、滝も美しい。
 ゴルジュ帯が終わり、沢が明るくなりだすと、大きな滑が現れた。渓流シューズのフリクションを聞かせてすたすた登っていく。右から枝沢を流入したところより少し上で昼食とした。上部に詰めのスラブが見え始めたところだ。
 昼食はソーメンだ。ばてた体に冷たいソーメンはとても食べやすい。ゆっくりと休んで疲れを取り、再び歩き出す。
 左から1:1で枝沢が流入し、ガイドブックでは小尾根を越えて高巻くとあるが、我々は滝を直登した。足場は悪いが、登ることは可能だ。
 その滝を登ったところでふうたさんがその滝の下で右から流入する滝が本流ではないかと言い出した。一応確認のため足場の悪い草付の斜面をトラバースしてその沢との間の尾根に登ってみた。沢を見比べると、我々が登った沢が本流には間違いないが、私が登った尾根には踏み跡があり鉈目もあった。我々が直登した滝の巻道のようだった。
 水量が一気に減り源流の様相を呈してきた。ガイドブックにこの間不明とあるところも、何とか登れる滝の連続だった。
 ただ、そこから少し登った7m滝で二人して滝の途中で動けなくなってしまった。完全にルートファインディングのミスで、ふうたさんがハーケンを2本打ってそこにスリングを掛け、それを手がかりにして登っていった。私はふうたさんよりザイルを出してもらって攀じ登った。
 その上で二股となり、この先一気に水量が減ることから、そこで水を補給した。
 そこから間もなく草付きの急なスラブ帯が始まった。沢底を歩かなければ足場はない。四つんばいにならなければ歩けないくらいの急なスラブだ。
 登っていくうちにガスがかかり始めた。すると「待ってぇ〜」という女性の声が聞こえた。もしや先行者がいるのかとも思ったが、もう稜線はすぐそこだ。登山道を歩く人の声が聞こえたようだ。
 左側の稜線の近くにややガレた岩場があるのが見え、そこを目指して左にトラバース気味に登っていった。そのガレ場の通過は慎重を期した、足場の岩はガラガラと崩れていったが、トラバース気味に歩いているので後続のふうたさんにはあたらない。
 そのガレ場を越すと稜線に上がった。ふうたさんに「出たよ〜」と声をかけ、祝瓶山の山頂を目指して歩き始めた。
 もう腿が張って痙攣寸前だ。ゆっくりと歩を進める。
 そして、やっと祝瓶山の山頂に着いた。まずは生ぬるいビールで乾杯し、ツェルトを張って夜を迎えた。

 山頂でのツェルトの一夜は、風が強くツェルトの生地が頭をはたき続けてよく眠れなかった。
 明け方より雨が降り始めた。
 起きると急いで朝食を摂って下山の途に付いた。
 相変わらずガスのため周囲の景色は見えない。雨で濡れた装備の入っているザックは重く感じられ、その上、渓流シューズでの下山は滑って歩きにくい、下りながらばて始めた。
 荒川沿いの道に合流する手前付近からまたアブに悩まされた。そして、針生平の林道に着くと、ものすごい数のアブの歓迎を受ける。着替えもせずに車に乗り込んで、ばたばたとアブをはたきまくりながら帰途に付いた。
 角楢沢は急遽予定を変更して登った沢だったが、景観がすばらしく、適度にザイルを使ったり、お助け紐やスリングを出したり、ショルダーで登ったりと技術を駆使することが出来て楽しい沢だった。

苔むした岩壁にはさまれたゴルジュ、緑の廊下のようだ。(撮影 ふうたさん) 唯一登ることの出来なかった10m×2段の滝 詰めのスラブ、四つんばいにならないと歩けない急峻なスラブだ

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