杉川 赤花沢(木六山)

2002年8月25日、寺尾さん、小見寺さん、吉田

コースタイム
8:35杉川林道終点発-9:35赤花沢入渓地点着10:02発-13:05巻道-13:30稜線-13:42木六山着14:35発-16:20杉川登山口着

 早出川の上流域を囲むようにして川内山塊は存在する。標高1000m前後の山の集まりで、県境に2000mの山々のある越後の山の中では決して目立つ存在ではない。
 しかし、私は春の残雪期や晩秋に好んでこの山域を訪れていた。雪で磨かれたスラブの岩肌が景観に彩を添え、残雪や紅葉を引き立たせている。また、整備された登山道が少ないことも静かな山が好きな私には気に入っていた。
 だが、夏は訪れることはなかった。なぜなら、この山域はヤマヒルが多数生息しているからだった。でも、秘境を好む各山岳会の報告の中に夏の川内の沢登りの報告を見るにつけて、一度訪れてみたいと思っていた。
 そんなところに、会の沢登り山行として寺尾さんが杉川の支流の赤花沢を遡行する計画を立て、案内が来た。私は一度は川内の沢を歩いてみたかったので同行を申し込んだ。

 杉川の林道の終点で豊栄から来るメンバーと待ち合わせをしていた。着いた途端、アブの群れが車に体当たり攻撃を仕掛けてしきた。私は車の中で虫除けスプレーを体に吹き付けて車を降りた。虫除けスプレーの効果か、アブは遠巻に飛んでいるだけで近づかなくなった。アブとヒルの名所の川内山塊に足を踏み入れたのだ。しかし、このとき誤算だったのは、私が持ってきた虫除けスプレーは、このときほぼ空になってしまったのだった。
 なかなかメンバーが来ないので、様子を見ようと戻り始めたら、寺尾さんの車がやってきた。
 支度をする前に全員寺尾さん持参の虫除けスプレーを体に吹き付けた。雨上がりの駐車場にはそこここにヒルが徘徊しているのが分かる。何を感知しているのか、車にも寄って来ていた。
 一人の登山者が我々より先に歩き始めた。ヒルのいる山域に真夏に登るのは我々だけじゃない様だ。
 

 杉川沿いの登山道を歩き始めた。虫除けスプレーを付けているからヒルは寄ってこないだろう考えていた。すると、先行した登山者が戻ってきた。聞くとあまりにヒルがすごくて帰ってきたと言っていた。見ると膝から下はヒルだらけになっている。我々は虫除けスプレーを付けているから安心だとその登山者に告げて歩き出した。ところが、ふと足元を見ると、既に数匹ズボンの裾や靴についている。裾をまくると靴下にも群がっていた。それからは少し歩いては立ち止まってヒルを取り、そしてまた歩くといった感じで歩き、なかなか進まなくなってしまった。
 グシノ峰の分岐を過ぎると道は踏み跡程度になってきた。へつり道で足場の悪いところもある。逢塞(おうそこ)川の出合付近に川底に下降する道が分かれたが、我々はその道を下りずに逢塞川沿いの踏み跡程度のへつり道を進んでいった。
 やがて赤花沢ぞいのへつり道になり、地形図のゴルジュの地形が終わるあたりで沢に降り立った。
 そこで靴や靴下を脱いで、足についているヒルを丹念に取った。既に数箇所血が吸われていた。そこから先はアブには会ったがヒルには会わなかった。ヒルのいる所は決まっているようだ。
 入渓後まもなく10mの滝が現れ、右岸を高巻いた。高巻から降りたところが二股になっていた。二股から少し水量が減り、5mの滝が2段になって落ちていて、私と寺尾さんは直登し小見寺さんは右岸を高巻した。高巻している小見寺さんからその上に15mの滝があり、とても登れそうもないと声がかかった。私と寺尾さんも2段目の滝を登った後に右岸の高巻に入った。
 その高巻といっても斜度70度くらいの岩壁で、滝の高さ以上に登らねばならない。私は今年4度目の沢登りで高度感には慣れているが、久しぶりの沢登りの小見寺さんは寺尾さんからザイルで確保してもらって登ってきた。
 その高巻を終えてしばらくはゴーロがあったりゴルジュがあったり、登れる小さな滝があっりといい雰囲気になってきた。
 再び1:1の二股になった。小休止して小見寺さん持参の遡行図を見る。左俣は滝の連続、右俣はあまり滝はないが最後に大きな高巻があり、縦走路に出る前に藪こぎがあるようだ。
 どちらを行くかということになり、滝が多くて藪こぎの少ない左俣を選んだ。しかし、結局高巻ばかりで、この後沢登りというより藪こぎ登山になってしまう。
 出合の50m3段の滝は沢の間の尾根を登って巻くことにした。しかし、なかなか滝の連続で沢に降りられず、100mくらい登ってから沢に下りた。しかし、少し行くとまた直登不可能な滝が現れ、再び高巻に入った。結局沢が大きく東に曲がる標高470m付近になってようやく沢に下りた。沢は源頭近い雰囲気になってきた。
 ガレた沢底を歩いていると周囲は綺麗なブナ林に包まれだした。水は少なくなり、巻道に出た。この巻道は藤島玄の「越後の山旅」の五剣谷岳に項に紹介されている巻道だろう。現在は利用する人も少ないと思われる。
 我々は木六山の山頂に立つべくその巻道を七郎平方向に少し進んで、適当な尾根を登っていった。ブナ林は藪が薄く藪こぎはほとんど無く稜線に出ることが出来た。
 稜線の縦走路に出るとほっとしておしゃべりしながら歩くようになる。
 木六山の山頂からは川内の展望が広がった。残雪期以外では初めて訪れる木六山だ。
 遡行の無事を祝って乾杯し、遅い昼食を摂った。

 下山は登り返しのないということで水無平ルートを取った。夏場は歩く人が少ないのだろう。少々藪っぽい登山道だ。
 稜線から離れ下降し始めると早くもヒルが付き始めた。入渓前と同様少し歩いては立ち止まってヒルを取る歩きが続いた。私は下山はスニーカーに履き替えていたため、ヒルが靴の中まで入ってきて難渋した。
 登山口の駐車場に帰って足を見ると、靴の中や靴下の中までもヒルが入り込んでいて私の血を吸っていた。引っ張っても取れないし、虫除けスプレーは既に空っぽ、車に置いてあるはさみやペンチで切ったり引っ張ったりして取り除いた。
 結局、沢登りよりもヒルとの戦いのほうが思い出に残った山行となった。

小滝が連続するところもあった。 左俣出合にかかる50m3段の滝の下段部分、右の藪尾根を延々と高巻きする 足にくっついたヒル、ピンボケしているが分かるかな?

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