広谷川支流湯沢〜高頭

2002年10月14日、ふうたさん、吉田

コースタイム
6:30蝉ケ平ルート登山口-7:10湯沢出合着7:30発-7:40F340m滝下9:45滝上-10:45二股着12:30発-15:00高頭着15:25発-16:30湯沢出合-17:15登山口着

 会越国境に聳える御神楽岳は、東面や南面に壮大なスラブを有し、その姿は蝉ケ平登山道である榮太郎新道より眺めることが出来る。
 私も以前この榮太郎新道を登ったときや、笠倉山に登ったときにそのスラブの壮大さを目にしていたが、そこを登ることは考えても見なかった。しかし、昨年会の山行で本名穴沢が計画されたが、体調不良で参加できず、それ以来一度はあのスラブを登ってみたいと思うようになった。御神楽岳東面のスラブのうち、湯沢を選んだのは、そこが一番登山口に近いからというそれだけの理由だった。だが、どうやら難しい沢のようだった。
  
 新潟市内でふうたさんと待ち合わせをし、高速をとばして榮太郎新道の登山口に向かった。秋の日は短い、日中の時間を有効に使おうと早めの出発だ。
 榮太郎新道の登山口には数台の車があった。連休で天気のいいこの日、御神楽岳を目指す登山者は多いようである。ハーケンにカラピナ、スリングはもちろん、アブミ、ボルトまで用意し、ザイルは2本用意しての出発だ。
 まずは広谷川沿いの平坦な道、小沢を横切るところで先行パーティーを追い越すが、沢を渡るのに手間取っている。岩場の多い榮太郎新道、この先大丈夫なのだろうか。
 すたすたあるいて湯沢の出合に到着した。ここで再度装備を確認して入渓した。最初は平凡な渓相だが、すぐにF1,F2となんてことない滝を越す。
 最初の難所はF3だ。落差は40mくらいか。
 ここで登攀力のあるふうたさんが空身で取り付いた、岩がもろいところなのでハーケンを使わずボルトを打ち込んでいたが、どうやらうまくいかなかったらしい、結局残置ハーケンと新しく打ったハーケンを使ってビレイを取る事になった。ふうたさんのザックは最後に引き上げる段取りだ。
 足場の悪いところではなかなか手間取りながら登っている。ビレイポイントがいくつにもなって摩擦でザイルが伸びないようだ、ふうたさんは渾身の力をこめてザイルを引っ張って登っていた。
 そして、滝上に出て、今度は私の番だ。私はザックを担いで登り、もう一つのザイルをふうたさんのザックに縛り、そのザイルを引きずって上がるべく用意をしていたら、ふうたさんは何を勘違いしたのか、ザイルをするすると引き上げ始めた。気がつくと最初のビレイポイントまではザイルなしで上がらなければならなくなってしまった。
 なんとかそこまでは足場もあり問題なかったが、どうもこの日の私は臆病で、いつもなら平気で足を乗せる所を何度も確認しながら登っている。最初のビレイポイント近くは足場がしっかりしているので、そこでザイルを結びつけて登った。滝の落ち口近くは滑って足場はかなり悪かった。
 そして、ふうたさんのザックを引き上げたが、滝の水圧がかかって重くて仕方がない。やっとの思いで引き上げたが、びしょびしょに濡れてしまった。
 この滝を越えるのに1時間もかかってしまった。
 その上のF4は右からへつって越えられそうだったが、とにかくこの日の私は臆病になっている。この滝は落ちても下は釜があるので怖くはなかったが、右壁に登れそうなルンゼがあったのでそこを高巻くことにした。
 ところが、ある程度あがってスラブをトラバースしようと思ったが、どうも怖い。考えてみたら今までスラブのトラバースなどやったことがないのだ。少し上に藪があったのでそこまで上がって藪の中をトラバースすることにした。とにかくいままで経験のない高さなので怖くて仕方ない。沢床より50m以上は上がっていると思われた。
 藪の中のトラバースは安心だ。すこし登り気味に行ったら栄太郎新道のある尾根が見えるところまで登ってしまった。このまま登りたい気持ちになったが、水筒の中は空だ。それに目指すダイレクトスラブをあきらめるのは早い。一旦藪の途切れるところまで下り、藪の途切れるところの木に支点をとって、2本のザイルをつなぎ合わせて懸垂で沢床に下った。下ったところはちょうど二股のところだった。
 左股が目指すダイレクトスラブ湯沢の頭に突き上げる。右股は高頭(地形図では953mの標高点より湯沢の頭よりのところに地名が書かれているが、実際は953mの標高点が高頭である。そして、読みは「たかつむり」ではなく「こうつむり」と現地の標識は記されている。)の南の鞍部に突き上げるスラブだ。両方とも40m〜50mの滝がかかっている。右股の滝はとても登れそうもない。左股の滝を登り、ダイレクトスラブに登ることにした。
 しかし、その滝もなかなか手ごわそうだ。ふうたさんがリードして登り私は確保するが、足場が悪くなかなか一歩が出ないようだ。最初に取り付いたルートをあきらめ、一旦下降、滝のすぐ左のルンゼに取り掛かるが、これも手間取り、声をかけて時間も時間だから高頭右側のスラブなら途中に絶壁もなさそうだったので、そちらを行こうと声をかけて降りてきてもらった。
 そして、二股で昼食、近くにカモシカの白骨死体があった。雪崩にやられたのか、それとも転落したのか・・・・
 懸垂下降した付近の藪の斜面を登って行った。その上のスラブを右寄りにトラバース気味に登っていった。
 そして、涸滝のかかる所を登ったがそこが見た目より足場が悪く、ノーザイルでのぼろうとしたふうたさんが残置ハーケンにお助けロープをかけて降りてきた。そして、ザイルで確保して登ったが、ここはこれまで越えた滝より苦労した。藪の中を歩いたためか靴底に泥がついていてフリクョンが効きづらかった。
 その上は快適なスラブだったが足場に浮石が多く、浮き石のない所は傾斜がきつい、ふたりでそれぞれ離れたコースを登っていったらかなり離れてしまった。スラブの左よりを登るふうたさんの方が傾斜がきつそうだったが、所々ブッシュがあるので疲れたら休むところもありそうだ、私の歩いている所は2本足で歩けるが浮き石が多い。斜度のゆるい所を選んでトラバースしてふうたさんの後ろに付いた。
 急傾斜のスラブとブッシュの斜面を3点支持で確実に登っていく。この頃には高度感にもなれていた。しかし、1歩間違えば落差は400mあるスラブだ気は抜けない。
 藪の小尾根に乗り上げた。高頭より派生している尾根だ。尾根に上がってほっとした。
 展望は素晴らしい、対岸に笠倉山が対峙している。
 尾根に上がっても急な登りは続いた。藪斜面も3点支持をしなければならないが、枝が上から押さえつけるように伸びているので腕の力が要る。何度も小休止して登った。
 高頭間近に登るのに難しい岩場があり、その基部を右からトラバースして登山道に出た。そして、高頭の上に立った。
 時刻は既に15時になっている。ダイレクトスラブをあきらめてよかったようだ。
 私の持ってきたビール350mlを二人で分けて乾杯。紅葉のに彩られた山々を眺めて休んだ。
 下山は榮太郎新道だ。登山道とはいえ岩場の多い道だ、ゆっくり下山した。そこから見る湯沢のスラブは圧巻だ。我々が登ったルートも上部の方は見えるが、すごいところを登ったもんだと感心してしまった。
 湯沢の出合まで下りればあとは平坦な道だ。またすたすた歩きなんとか暗くなる前に登山口に戻ってきた。

とにかく、これまでにない高度感を体験した。いい経験になった。御神楽の沢登りは、沢登りというより岩登りの範疇になると思った。

榮太郎新道から見た、湯沢のスラブ。
左のピークが湯沢の頭、右が高頭。
我々が登ったルートは、目の前の尾根の向こうで上部しか
見えない。
登ってきたスラブを振り返る。かなりの高度感だ。 ダイレクトスラブを望む。(左下から右上にいたるルート)
湯沢スラブのルート図(岳人99年10月号より)


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