下黒姫沢

守門黒姫途中撤退、山スキーの記録

2003年2月23日、単独

コースタイム
7:25ムジナ沢橋発-7:58林道終点着8:03発-9:43尾根上の831m地点着9:48発-11:15撤退(1115mの標高点東側の尾根の先端付近)-11:25 1115m地点着(昼食)12:25発-12:40標高1030mの平地着12:50発-13:48林道終点着13:55発-14:12ムジナ沢橋着

 守門岳は越後の名山といっても過言ではない。特に冬の白く輝く姿は美しい。
 昨年3月、会の山行で下黒姫沢を山スキーで遡り、守門の袴腰へ登った。白く輝く守門の頂は感動そのものだったが、袴腰から続く稜線上にある黒姫のピークを踏んでみたいと思うようになった。
 そして、この日単独で袴腰と黒姫の両方に行こうという欲張りな計画を立てた。しかし、出発時間が遅かったのと、ルートのミスが重なり、また、私は仕事の関係から携帯の圏外に一日中いることは出来ない。よって、どちらのピークにも立てないという結果に終わった。

 浅草岳より流れ落ちるムジナ沢にかかる橋に車を止めて、道路わきの雪の壁を攀じ登るところからこの山行は始まった。雪の壁の上でスキーを履いて、橋をくぐって下黒姫沢へ向かう林道を歩き出した。
 破間川(あぶるまがわ)の橋に動物の足跡があった。人間が作った橋を野生の動物が利用するなんて面白い。
 しばらくは林道の歩きだ。昨年はシールにやたらと雪がくっついて苦労したが、今年は全然付かないので快適だ。
 林道終点で一旦ヒールを固定して沢底に滑り降りた。沢底に降りたところの適当な木にオレンジ布を付けた。
 再びヒールをフリーにして歩く。所々沢水がぽっかり開いた穴から見える。こんなところに落ちたら中々這い上がれないだろう。穴のあいたところは沢の岸の高台を歩いた。
 歩き始めてから一時間ほどした頃だっただろうか。空はきれいに晴れているのに沢底を歩くのはつまらないと思い始めた。場所は標高660m付近だと思われる。周囲の地形から現在地を特定し、上黒姫沢との間の尾根を登ることにした。後で考えるとここに間違いがあった。
 ぶな林の中の小尾根を登っていくと展望が開けてきた。あいにく浅草岳は雲に隠れていたが、それでも青い空と白い山の景色は感動そのものだ。
 ところが稜線上に出る手前辺りから積もった雪の下に亀裂が多く入っていることがわかった。時々スポッともぐる。その度に這い上がってルート変更だ。しかし、またズボッともぐる。稜線に出るとそこは痩せ尾根だった。地形図を見て判断が出来るだろうに青空につられて上ってきてしまったのだ。
 雪庇は下黒姫沢方向に伸びているが、所々上黒姫沢にも小さく伸びているところもある。守門を越えて吹き降ろす風の複雑さがこのことでわかる。稜線を目で追いながらルートをイメージした。危険ではあるが雪庇の上を歩くことにした。雪で亀裂の見えない斜面のトラバースはなお危険と判断した。雪庇が崩れてもすぐその下は緩斜面なので下まで落ちることは無いだろう。
 松の生えた鋭いピークがあり、先端から雪煙を上げていた。そこは下黒姫沢側をトラバースしたが途中で固い雪にエッジが効かなくなり、斜度もあることからスキーを脱いだ。ところがそこからが大変だった。小さい亀裂が多く走っているらしく、数歩ごとに腰まで落ちた。その度に這い上がり、なんとか稜線上に出たのだった。

苦労した痩せ尾根。
奥に見える松の生えたピークはトラバースに苦労したピーク

 そして、痩せ尾根最後の部分は、両方に雪庇が出来、なおかつ稜線に向かっても小さく雪庇が出来ていた。「いったいどこを登れと言うんだ」と思わずぼやいてしまった。一旦下黒姫沢側をトラバースしたが、いきなり足元の雪がわれ片足が落ちた。這い上がって中を覗くと自分の背丈以上はある。こんなところに落ちたら春までここで暮らさねばならない。雪の割れ目で春を迎えるのはまっぴらだ。元のところまで引き返した。
 今度は上黒姫沢側をトラバースした。なんとか一ヶ所雪庇が雪面と付いているところが幅1m位であり、そこから稜線上に出た。
 振り返ってみると痩せ尾根は厳しいが、雪と風の作る美しい姿だ。
 831mの標高点付近からぶなの原生林の中の幅広い尾根に入っていった。緊張で喉がからからになりティータイムとした。
 当初は袴腰と黒姫両方登るつもりだったが、黒姫だけに目標を絞ることに予定を変更した。
 そこからぶなの美しい原生林の中を尾根沿いに登り、標高1030mの平地から上黒姫沢の源頭部を横切り、1115mの標高点の東側より黒姫の稜線に登る尾根に取り付こうとした。
 しかし、遠くから見たときは一筋のきれいな尾根も、近くに来ると亀裂が多く、その上取り付き部分は急登の上部に今にも落ちそうな雪の塊や岩が止まっていた。ルートを変更しなければならない。
 撤退時間は12時と決めていた。まだ時間はあるがこの分では12時までに稜線に上がることすら出来ない。そして、私は仕事の関係上携帯の圏外に長くいることが出来ないのだ。稜線に上がれば携帯は通じるつもりで来ていたが、稜線に上がっても通じるかどうか・・・。このところ毎週日曜日に仕事の電話がかかってくるようになった。山で仕事を気にするのはどうかと思うが仕事あっての山なので仕方が無い。
 撤退することにした。振り返るとちょうど浅草岳が雲から姿を現していた。
 1115mの標高点付近に戻り天気がいいので外で昼食しようとしたが、じっとしていると寒いのでツェルトを張って中にもぐりこんで昼食とした。
 下りは上黒姫沢を横切り、1030mの平地でシールをはずし靴紐をきつく縛った。相変わらずの登山靴スキーである。
 空が曇り始めて日が翳ってきたので雪面状態がよくわからない。最初はやや急な斜面だったが、木のうるさくないところを選んでスキーをずらしながらゆっくり滑った。だんだん進むごとに斜度が緩くなる。途中からヒールをフリーにして対応した。
 ぼこっと開いた穴から沢に落ちないように注意した。
 林道に上がるところはスキーを脱いで壷足で登ったが、わずかな距離だが中々苦労した。林道は快適に滑って降りることが出来た。

 雪の守門岳。行く度に学ぶところの多い山である。

朝の下黒姫沢 1115m地点から稜線を見上げる 1115m地点から見た浅草岳

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