棒掛山

2003年3月16日、吉田、とんとん、えび太、ふうた、ほっきょくくま、えんじぇるん、taku、バク

コースタイム
7:20水沢集落奥発-12:00山頂着13:45発-16:40水沢着

 鹿瀬町の鹿瀬電工の先の小さな峠を越えると、目の前に飛び込んでくる大きな山がある。棒掛山だ。これだけ堂々とした山容をもちながら、整備された登山道が無いのは、この山が見える場所は限られており、また平頂ゆえ目立たないので人々の興味を集めなかったのだろう。
 私は4年前まだ雪山初心者だった頃、長靴にピッケルといういでたちで登った。その時の山頂から見える真っ白い飯豊連峰と足元を蛇行して流れる阿賀野川の流れに感動して、その月のうちに再訪したのだった。
 ネット界で人気を集めているとんとんさんと仲間達をこの時期ならではの山に案内したいと思っていた。とんとんさんの休みの日程を確認し、この日に棒掛山に案内することにした。
 彼女は一緒にいると周りのメンバーを楽しくさせてくれる、人徳のある女性登山愛好家だ。今回もとても楽しい思い出に残る山行が出来た。

 宝珠山の草水登山口にあるコインレストランで合流して、鹿瀬町の水沢集落を目指した。朝は放射冷却のためかかなり冷え込んだ。路面も所々凍結している。
 水沢集落の中を通り過ぎ、集落のはずれにある簡易水道の施設横に車を止めた。除雪はまだこの先まで続いているが、数日前に下見に来たとき、返せる場所が無かったのでここに止めたのだ。
 先客がいた。見てみると藪山ネットのメンバーで以前一緒に棒掛山に登った玉木さんだった。彼は3人パーティーで竹ノ倉山を目指すという。談笑して見送った。
 除雪された林道を歩きはじめたが、間もなく除雪されない道になった。前日の物かわかんのトレースがあった。棒掛山に続くものか?やがてずぼずぼもぐるようになり、わかんを付けた。
 左から小沢が流れ込むあたりで林道をショートカットするために、森の中を登って行った。この登りの途中でピッケルを買ったばかりのメンバーにピッケルの簡単な使い方の講義をした。
 林道の上の部分に出てすぐ、小沢沿いに林の中を登った。先ほどのトレースはなくなっていた。
 すぐに杉林に入り、視界が無く尾根も谷もはっきりしない地形のためにコンパスで進行方向をセットして歩いた。コンパス利用の練習になると、他のメンバーに先頭を歩くように勧めたが、誰も尻込みをして歩かない、結局私が杉林を抜けるまで先行する事になってしまった。
 気温がぐんぐん上がり、日陰の杉林でさえずぼずぼもぐる。思ったよりも時間がかかる。杉林を抜けたとき既に歩き始めて2時間が経過していた。私は常に先頭を歩いていたため、足は既に疲労がたまり始めていた。
 2時間たって尾根にも取り付けない事から途中撤退かもしれないなとメンバーに伝え、行けるところまで行くことにした。
 ここからようやく先頭を交代しながら進む。スノーシューを履いているふうたさんとtakuさんはメンバーから離れ、独自のルートを歩いている。我々は早く尾根に上がろうと尾根の先端に近い左手を目指しているが、ふうたさんは右よりのコースだ。天気がいいので見える範囲だから気にしなかった。
 尾根に上がったところは痩せ尾根で、そのまま尾根を進み広くなったところで小休止した。この時既に10時を過ぎ、気温が上がって雪が緩みとても昼までに山頂につけないと判断し、11時まで進んで撤退しようとメンバーに告げた。
 とにかくぐさぐさ雪で歩きにくい。ピッケルなど役に立たない。やっぱりストックを持ってくればよかったと思うがあとの祭りだ。身軽なtakuさんはスノーシューでどんどん先に行く、同じスノーシューなのにふうたさんはずぼすぼもぐる彼はついに隊列に加わった。体重の差か、歩き方が悪いのか?
 11時頃、標高は780m付近にまで至った。ここでやめてもいいと思ったが、takuさんがあと1時間で山頂に着けると言い出した。山頂はなるほど近くに見える、しかし、この雪じゃどうだろう。もう30分進んで考えることにした。
 傾斜も徐々に緩くなり始め、東からの尾根と合流すると山頂はもうすぐだ。ここまで来たら引き返すのは惜しい。足は相当疲れていたが、山頂を目指すことにした。
 正午ジャストに山頂に着いた。4年ぶりの棒掛山の山頂だ。広いグランドのような山頂からは白く輝く飯豊連峰が見え、足元には蛇行する阿賀野川が見える。気温が上がったため遠くの山はかすんで見えたが、やはりこの山の展望は素晴らしい。
 飯豊をバックに記念写真を撮り、メンバーそれぞれに写真を撮っていた。
 一段下がって飯豊の見えるところで昼食とした。今回はとんとんさんが手作りの煮物を作ってきてくれた。また、みな持ち寄ったおいしい食べ物はここが藪山の頂だとは思えない豪華なものだった。
 あっという間に時間が過ぎ、下山を開始した。
 往路を下山する予定でいたが、ふうたさんが東斜面を下ろうと提案した。このコースは以前takuさんが通ったことがあるルートと思っていたので、経験者がいるし雪がこれだけ緩んでいれば、もぐりこそすれ落ちないだろうとこのコースをおりることにした。しかし、あとでわかったのだが、takuさんが以前歩いたルートはここではなく、北東方向の尾根だった。
 目の前に絶景が広がった。一気に急降下する斜面で雪が適度に緩んでいるのでわかんでも充分に雪に食い込んだ。
 ふうたさんがどんどん先に行った。それを追うようにバクさんが進んでいた。とんとんさんやえんじぇるんさんは少々緊張気味だ。最初バーティーの前のほうに歩いて歩くコースを指示しようとしたが、ふうたさんが完全に離れてしまい、見えなくなってしまった。
 ふと見るとバクさんが落ちていく、雪が緩いからすぐ止まるだろうと見ていたが、かなりの長さを滑ってようやく止まった。雪が緩いから安心と思っていたが、小規模な雪崩があちらこちらで起きており、その部分は雪が硬くなっていたのだ。この日の数日前に新雪が積もり、弱層が出来ている。気温が上がれば雪崩が起こりやすい条件は整っている。この斜面の状況だと、雪崩はどこで起きてもおかしくない。
 声の届くところにいるメンバーにはわかんをはずしてピッケルに持ち替えてもらい。斜面の中でも小さな尾根状のところを歩くことにした。トラバースを混ぜながらその尾根に向かう。takuさんが適度な尾根に待ってくれ、ここを降りましょうといった。確かにそこなら安全そうに見えた。雪崩跡をトラバースするときはピッケルでカッティングして足場を作ってみんなを通過させ、その後はパーティーの最後尾についた。
 この時気づかなかったが、バクさんは再び滑落したらしい、彼の話によると一旦止まった後、雪崩に流されたらしい。まだ雪山に慣れないメンバーが目の届かないところに行ってしまい、怪我は無くても滑落したとなるとリーダーとしての責任は重大だ。
 えんじぇるんさんはかなり怖がっていた。私がぬかったこともあり、かなりパーティーがバラけてしまった。大声を出して斜度が緩くなったところで待つように指示した。
 急斜面をかなりの時間をかけてゆっくり下り、下で待つメンバーに追いついた。バクさんにとにかく滑り始めたらストックのグリップでも雪に刺そうとするだけで落ちる向きが頭からではなく、足からになる。腹ばいになって落ちれば、止まった後に次の動きにうつりやすいと教えた。ピッケルを持ってきていたのに、ピッケルを使っていれば滑っても落ちなかっただろう。それよりも、雪崩跡を歩くときの歩き方が悪かったかもしれない。いろいろ反省点はあるだろうが、怪我が無かったのは幸いだった。
 この斜面を全員降りるのに2時間くらいかかった。ショートカットの意味は全く無かった。このレポートを読んで棒掛山を目指す諸氏はこのルートは通らないで欲しい。我々が無事故で降りられたのはラッキーだっただけだ。リーダーとして安易なコース変更はすべきでなかったと反省している。
 再び、暗い杉林をコンパス頼りに通り過ぎ、林道に出てからは往路のトレース沿いに戻った。
 
 下山では反省材料があったが、この経験を今後に生かして行き、今後も楽しく安全な登山を続けて行きたいと思う。

真っ白く輝く、飯豊連峰
大きく見えるのは大日岳
雪のバームクーヘン 東斜面は急傾斜だが絶景だった。(takuさん撮影)


今回のルート(takuさん作成)

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