守門岳

吉ケ平〜大岳

2003年6月8日、吉田、山楽、バク、スニフ、しぶや

コースタイム
6:30吉ケ平発-7:20栃ノ木平着7:16発-7:23桂のへつり着-渡渉-7:40渡渉地点発-8:07上人岩着8:12発-8:27上合沢出合-9:05天狗の田着9:20発
-9:50田野倉越着10:00発-10:50網張着10:55発-11:10大岳着13:35発-14:35保久礼着

 守門岳は、太古の昔大爆発をしたらしい、その痕跡は大岳から袴腰に至る火口壁で見ることが出来る。ただ、守門岳が他の火山と違うところは、爆裂火口壁を雪崩が更に磨きをかけているところである。
 しかし、その火口壁は人里から容易に見ることが出来ない。遠く新潟市内からは遠望することが出来るが、余りに遠くてよく見えない。
 数箇所から伸びている登山道をたどって山頂に至る人は、守門はやさしい稜線を持った山のイメージで登ってくるだろう。だが、裏側から見る守門は険しい表情をしているのだ。
 その姿を見るには、廃村になって久しい下田村吉ケ平から守門川を遡って、火口原の懐深く入り込まなければならない。
 前々年の秋に簡単な気持ちでこのルートをたどろうと出かけたが、天狗の田より先のコース取りを間違え、藪の中をうろうろしているうちに時間切れとなり撤退していた。
 それ以来このコースに対する思いが強くなった。
 
 前年の夏に網張より少し下降し、網張から下に続く踏み跡が、大崩沢源頭までのものであることを突き止めた。
 そして、この年の3月に袴腰に登り、守門の稜線についている雪庇の付き方を観察し、網張部分の雪庇が小さいことがわかった。
 このコースの攻略のポイントは天狗の田から網張の間のコース取りにある。その大部分が藪化している現在では、残雪が藪を埋めている時期を狙うのが効率がいい、しかし、あの大雪庇が張り出している時期では、雪庇の崩落による危険や、最後の網張の登りが厳しくなってしまう。
 よって、攻略の時期は雪庇が落ちきり、なおかつ火口原に残雪がまだまだ残っている6月初旬が最適と判断した。
 しかし、所属する山岳会はこの時期予定が多く、会の山行としてはさめる余地はないだろう。よって、インターネットで交流の深いメンバーに声をかけることにした。

 前日メンバーのうち4人で下山予定の保久礼の小屋に泊った。
 早朝、私の車で吉ケ平に移動し、山楽さんと合流した。
 吉ケ平の山荘前の駐車場には多くの車が止まっていた。その大半は山菜取りの人たちのものだろう。
 守門川沿いの林道を歩き出す。天気は晴れ、少し蒸し暑いくらいだ。
 林道はすぐに細くなり、最後の堰堤のやや手前で林道は終了していた。そこから先は山道だ。
 対岸に大滝沢の流入を見るところを過ぎて間もなく、栃の木の大木のある栃ノ木平に着いた。そして、そこから間もなく守門川が大きく蛇行している桂のへつりにさしかかった。
 前回来たときは正直にへつって行ったが、このへつり道はとても厳しく通過には時間がかかる。今回は渡渉して対岸に渡り、再び戻るという作戦を立てていた。
 メンバーは用意してきたサンダルに履き替え、私は鮎足袋に履き替えた。
 最初の渡渉地点はロープが張ってあった。ロープにつかまりながら対岸へ渡る。水は雪解け水で冷たく長い時間は入っていられない。深いところで膝くらい。膝までまくったズボンは濡れてしまった。
 全員が渡渉したのを見計らって先へ進み、再び渡渉した。今度はロープは張っていなかった。水深はやはり膝くらいあった。渡渉が終了して再び登山靴に履き替えたら、登山靴が暖かく感じた。

守門川の渡渉 サンカヨウが沢山咲いていた


 そこからは再び平坦な川沿いの道になる。上人岩から染み出す水はなかなか旨かった。
 上合沢出合を過ぎると守門川本流から少しずつ離れ始める。
 田野倉沢を渡ると道は田野倉沢右岸の山腹を登り始めた。そして、大雪原になった天狗の田に着いた。整備された道はここまでである。
 天狗の田で始めて大岳の火口壁が眼前に現れた。みな感嘆の息を漏らして見上げた。見上げているうちに大岳の絶壁でブロック雪崩が発生した。遠くに離れている我々のところにも爆音が響き渡った。
 前回来たときは、ここから先のコース取りで失敗したのだ。しかし、今回は笹薮を雪が埋め尽くしているので先が見通せる。天狗の田の奥の沢沿いを進み、途中から左へ折れれば田野倉越にいけると睨んだ。
 ある程度雪の上を進めたが、沢に入るところの雪の付き方が悪い。沢は滝状になっていたが、濡れながら沢身を歩いた。振り返ると全員黙々と付いてきている。
 少し進むと左から小沢が流入していた。地形図を取り出し、田野倉越の方向にコンパスを合わせると、この小沢が進む方向から流れている。よって、この沢沿いを登ることにした。
 沢床を歩きたいが、水が冷たく手をつけていられない。藪も急で厳しいが、藪を頼りに登っていった。
 やがて、雪渓になった。見上げると鞍部より少し左のようだ。小尾根を越えてとなりの雪渓に入り、そこを登った。
 雪は硬かったが、気温が上がっていたせいか、表面がザラメ状になっていて、足場を間違えなければ滑る心配はない。
 実はアイゼンを持ってくるようにメンバーに連絡しておいたのだが、前日保久礼から見上げた守門岳には残雪は少なく、アイゼン不要と判断を切り替えてしまったのだ。我々が登るのは東面なので雪渓に着く頃には雪は緩んでいるだろうと判断したのだ。アイゼンが欲しい場面だったが、無いものは仕方がない。だがピッケルがあるから恐くはない。
 急な雪渓を登りきると田野倉越に着いた。この部分だけ藪が出ていた。大岳を見上げると、山頂の登山者がこちらを見おろしている姿が見えた。
 大崩平上部をトラバースし網張の直下へ移動する。見上げると火口壁に大量の残雪を貼り付けたまま、烏帽子山から袴腰、袴岳、青雲岳、大岳と守門の役者が勢ぞろいして我々を見おろしていた。圧巻だ。こんな守門今まで見たことがない。
 網張直下は帯状に土壁になっている部分があったが、雪渓を詰めて、小尾根を越えて隣の雪渓に移れば藪こぎなしで行けそうだった。しかし、傾斜がかなり急そうに見える。雪渓を歩けなければ藪の部分を登ることにした。
 守門の火口壁は雪崩の巣だ。あちこちに雪のブロックや落石の跡がある。でも、遠めには急に見える雪渓もなんとか登れるようだった。唯一アイゼンを持ってきていた山楽さんはアイゼンを付けた。
 最後に藪の中に踏み跡を発見したが、それはどうやら雪崩の付けた跡のようだった。最後は絶壁に近いところをピッケルを頼りに攀じ登った。
 網張で登山道に出た。多くの気楽な登山者が行きかっている。ピッケルを持っているのは我々だけだ。
 そこからひとふんばりで大岳の山頂だ。沢山の登山者が山頂を埋めていた。
 そこで、待っているメンバーと合流して、楽しい宴会となった。おいしい料理に舌鼓を打っているうちに、山頂にいることを忘れてしまっていた。
 とにかく登山者が多い。守門が人気の山だということがよくわかる。
 下りは保久礼まで一般登山道を降りた。
 
 これで守門に至るルートの一つを攻略できた。
 しかし、守門にはまだまだルートはある。下山したらすぐにこの次の野望に心が向かってていた。

天狗の田より見上げた大岳 田野倉越直下の雪渓を登る
大崩平より見上げた、袴腰〜袴岳の稜線 大崩平よりみた、網張

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