霧来沢支流鞍掛沢左俣

本名御神楽

2003年7月6日、バク、吉田

コースタイム
5:00新潟市発=磐越高速=西会津=三島町=金山町=7:30登山口発-8:00八丁洗板末端-8:05鞍掛沢出合-8:45二又-10:00〜11:00核心部10m×2段の滝-12:50稜線-13:00本名御神楽着13:47発-15:30登山口着=峰越林道=室谷=津川=一般道=19:45新潟市着

 御神楽岳は堂々とした山容をしている。
 東蒲原の高台に上がればその山容を見る事が出来る。ただし、新潟市からは前衛の山の間から山頂部のみ見えるだけでその堂々とした山容は見ることが出来ない。、おそらく会津盆地からも見ることはできないだろう。隠れた名山と言える。
 そんな御神楽岳も近くから眺めると、雪崩が削ったスラブの岩壁や豊富な雪解け水が削る深い谷に囲まれて、険しい表情をしている。

 この日は、翌週予定している山行に使う峰越林道の下見をする必要が出てきて、御神楽岳会津側の霧来沢流域の沢に入ることにした。地形図を見ていると、目を引くのは前ケ岳の南壁と鞍掛沢だ。古滝沢も気になる存在だ。
 前ケ岳の南壁はクライミングシューズが必要かもしれない、私はまだ持っていない。そして、古滝沢は突き上げる尾根に道があるのは以前歩いていて分かったいたが、途中の古滝がどれほどの滝か分からない。
 鞍掛沢か古滝沢に絞って、インターネットや手元にある書物で記録のあるほうに行くことにした。そしたら、鞍掛沢はインターネット上に記録を発見し、そちらへ行くことにした。

 峰越林道の状況が分からないのて、行きは西会津より三島に抜けて会津側よりアプローチすることにする。
 西会津ICまで高速を使い、峠を越えて三島町で只見川沿いの国道に出て、金山町市街を過ぎ、本名ダムで只見川左岸の林道を入っていった。
 眼下に霧来沢の流れが見え、これから登る沢に思いを寄せた。
 峰越林道の分岐を過ぎると間もなく本名御神楽の登山口に到着する。既に3台の車が止めてあった。
 入渓地点はまだ先だ。スニーカーを履いて歩き始めた。
 平坦な道をすたすた歩くと間もなく八乙女の滝が現れた。名のある滝の割には大したことない滝だ。でも、せっかく来たのだから写真でも撮ろうと川原に降りて写真を撮った。
 登山道はこの滝を大きく高巻く。下りは鎖場になっていた。
 下りきると川沿いに道は伸びる。八丁洗板と呼ばれる大ナメの末端が見えたところで渓流シューズに履き替えてナメの上を歩いた。川幅いっぱいに浅く流れるナメの歩きは爽快だった。
 すぐに目指す鞍掛沢が右から合流した。合流地点は川原になっていたが、進むとすぐに先ほどの大ナメの続きのような岩盤の流れになった。
 快適に登れるナメ滝やスラブ滝がつぎつぎと現れ楽しい。途中でハーネスを装着する。
 両岸がV字状に狭まりだすとスノーブリッジが現れた。口から白い息を吐き出すように、スノーブリッジの下からもやが流れ出ている。一人ずつ走り抜けた。
 少し進むと再びスノーブリッジが現れた、今度は先ほどより長く出口は見えない。薄暗いが遠くに出口の明かりが漏れている。こちらも思い切って走り抜けた。
 今回は本流ではなく本名御神楽山頂に近い左俣を詰めることにしていた。インターネットで確認した出合の滝の写真を持ってきていたので、左から合わさる滝はすぐに分かった。
 左俣から落ちる滝の落差は10mくらいだろうか。直登もできなくはないかもしれないが、ここは大事に左岸を高巻いた。

 左俣に入ってからも水量は豊富で滝が連続して現れる。垂直に近い8m滝で参考にしていた資料ではザイルを出したと書かれていたが、バクさんがさっさと登ってしまい。私もフリーで登った。大したことは無かった。
 その後も直登出来る滝がどんどん現れる。私は滝登りに体が慣れスピードが上がっていった。
 やがて谷が広がるところで大きな雪渓が現れた。大きく口を開けたスノーブリッジの中は真っ暗だ。ここは雪渓の上に上がり中央部を避けて進んでいった。
 雪渓は左のほうが長く伸びているが、長く突き出している部分は薄くなっていると思い、短く切れている右から降りた。降りたところは山肌と雪渓の境目で足場は悪い。
 そこは、核心部の大滝が落ちている部分で、雪渓は沢底から10m近い高さでスノーブリッジを作っており、雪渓の先端はまるでスタジアムの屋根のようだ。目の前の滝はとても直登出来そうに無く、高巻することにした。手にした記録では右岸を高巻いたとあるが、右岸に行くには再び雪渓の上に登り返さねばならない。目の前に見えるルンゼをたどって上がっていけば高巻けるか?ルンゼの上にはしっかりとした潅木が見え、その左はテラス状になっていてよさそうだ。しかし、そこから先は見えない。あれこれ考えてもしょうがないので行くことにした。
 バクさんは沢初心者なので私がリードすることになる。練習場でリードの経験はあるが、現場でのリードの経験はない。これまで13回の沢登りの経験と、何度かの岩トレの勘を信じて歩き出した。
 山肌の途中に立っているので目の前のルンゼまでトラバースしなければならない。ここでしくじれば谷底に落ちる。谷底まで8mくらいか?リッジの泥を手でどけてホールドを確かめてルンゼに至った。
 ルンゼは足場もホールドもしっかりしているが、泥が埋めていてフリクションが効きづらい。10mほど上がったところでハーケンを一枚打った。手で引っ張り抜けないことを確認してからザイルを通す。
 ルンゼの上の潅木で2つ目の支点を取った。ここを這い上がってテラスに出たところでビレイヤーのバクさんから「あと2m」の声がかかる。岩壁に岩の隙間に根づいた小さな木2本にシュリンゲを巻きつけ支点をとりピッチを切った。こんな細い木では心もとないが、他に木は生えていない。ハーケンも3枚しか持って来ていないうち1枚は使ってしまったので残りは2枚だ。出来ればここで使いたくない。目の前には大滝の上に更に10mの滝が見えている。バクさんに合図して登ってきてもらった。
 しかし、ここから先が悪かった。
 まずは岩の隙間を這いながら進み、わずかな足がかりで立ち上がり行く先を見た。滝の落ち口近くの高さまで来ているが、トラバースの足場がない。上に登るにも草付きの泥壁だ。しかし、そこを登らねばならない。適当な岩にハーケンを打ち込んで心を落ち着かせて泥壁を登った。
 草の根もとの泥にキックステップで足場を作り、両手で草の根もとを束ねて持つ。足場の草も手に握った草も頼りなく、簡単に抜けた。何度かその作業を繰り返すうちコツをつかみ、足がずれ落ちている間に次の足場を作り、手は草をつかんでいるけど体重をかけないで登っていった。その作業を繰り返しながら滝の上方向に斜め気味に上がった。
 岩の隙間にしっかりした潅木が数本生えていて、そこで支点をとりビレイヤーのバクさんにザイルの残量を聞いた。残り5mということだ。上の滝まで巻けるかどうか見てみる。弱弱しい草つきの壁が続き、これから先は行けそうもない。一旦沢床に降りて作戦を練るべく、そこでピッチを切った。
 後から登るバクさんは沢は初心者だが、岩トレは何度かこなしている。しかし、草つきの泥壁を登る経験はないはずだ。何度もザイルにテンションがかかった。
 そこから懸垂で沢床に降りた。歩いた壁を見返すとよくこんなところ登ったと感心してしまった。右岸は上は潅木帯だ。そちらの方が良かったかもしれない。この大滝の高巻きに1時間を要してしまった。
 その上の10m滝は簡単に登れた。それからは10m前後の登れる滝が連続して現れどんどん高度を上げていった。お助けロープ10mを使ったり、ショルダーで越えたり、楽しい沢登りが続いた。
 幅10cmのチムニー(?)滝なんかもあり、自然の造形に感心しながらの沢旅だ。
 源頭に近くなり、12時になったところで昼食を摂った。
 水流が消え、沢もひど状になり、それも消えかかったところで左寄りに藪に突っ込んだ。
 藪に入る前に呼吸を整えて藪に入ったら、ほんの数分で頭が登山道に飛び出した。右に見ると本名御神楽ガ至近距離だ。ここまでくれば山頂を踏みたい。バクさんが登ってきて同意を得た後、山頂に向かって歩き出した。
 沢と違って尾根は暑い。それに、沢登りを終えた後の稜線歩きは何故か足取りが重い。わずかな距離が長く感じた。
 本名御神楽山頂からは絶景が広がった。ハーネスをはずし、ヘルメットを脱ぎ、濡れたザイルや衣服を広げて干した。私の持ってきた350mlのビールを二人で分けて乾杯だ。山頂は我々以外は誰もいない。
 山頂から鞍掛沢を見下ろすと、下のほうに小さく雪渓が見えていた。反対側は名渓広谷川のム沢源頭の雪渓がまぶしい。そして、山肌に貼りついた無数のスラブ。
 スニーカーに履き替えて下りは登山道を下ったが、ハードな沢の後だけに下りも腿にはきつかった。
 霧来沢に近づいたところで川原に降りて渓流シューズに履き替えた。暑い登山道より沢床を歩いた方が気持ちがいい。
 もうかけ沢出合を過ぎたところで登山道に戻り、登山口まで戻ってきた。
 帰りは翌週の下見のために峰越林道を通って帰ってきた。

 ガイドなどに紹介されていない沢でも素晴らしい渓谷がある。鞍掛沢はそんな沢だった。
 

白い息を吐くスノーブリッジ 左俣出合の滝10m
滝を登るバクさん 滝を登るバクさん
幅10cmのチムニ(?)滝。見事な造形 本名御神楽山頂。

新潟県下越の山の目次へ戻る

ホームへ戻る

inserted by FC2 system