鬼ガ面山

南岳

2003年11月24日、単独

コースタイム
7:20六十里トンネル越後側登山口発-7:43六十里峠-8:18電波塔-10:00南岳着10:10発-10:46電波塔-11:04六十里峠11:21登山口着

 会越国境稜線に位置する鬼ガ面山。標高は1400mそこそこと大した高さではなく、遠くから見てもこれといった特徴のあるピークを持っていない。
 しかし、東側に悪絶無双の東壁を要し、会津側から見る景観はこの山の名前の由来を物語っている。
 だが、標高の割には夏は高山植物が豊富で、それから、会越の名山を眺めながら歩く絶景の稜線も気分がいい。いつしか私のお気に入りの山になっていた。
 今年も鬼ガ面界隈のバリエーションルートで楽しませてもらったが、山々が白くなり晴れの予報のこの日、昼頃までに下山できる展望のいい山ということで、鬼ガ面山に行くことにした。

 早朝自宅を出て、登山口の入広瀬村へ向かう。
 空は満点の星だ。その空も東の方から明るくなり始め、守門岳の稜線が朱色の空に白い姿を現した。今日の展望は期待できそうだ。
 入広瀬付近の国道の温度計は-1゜Cを示していた。いよいよ氷点下の気温になる季節が始まるようだ。
 登山口の県境の六十里トンネルの入口の駐車スペースに車を置く。トンネル内で工事をするようで、そこには工事用の休憩所が設置してあった。休日なのに誰かいるので聞いて見ると、この日も工事をするらしい、この駐車場は工事用車輌が出入りするので隅のほうに車を止めるように言われた。
 登山道に足を踏み入れる。
 登山道には雪がうっすらと積もっている程度で歩きには全く支障がない。周囲は濃い霧に包まれていた。
 木々の梢には霜が降りていて、木の高いところはエビのシッポが形成されていた。
 登っていくうちに霧の上に出た。見上げると真っ青な空だ。冬枯れの木の間から振り返ると毛猛の山々が見えている。稜線の会津側は雲海だ。その雲海の雲の流れが六十里越を越えている。
 周囲のブナの木にはエビのシッポが付いているが、気温が上がってきたためか、それらがハラハラと落ちてきている。その音が森全体に広がり、さながらもの言わぬブナの木が隣の木とひそひそ話をしていて、それが森全体のざわめきになっているようなそんな風に聞こえる。
 そして、雪の表面にはエビのシッポのシャーベットが降り積もっていく。
 電波塔の広場に着くと展望が開ける。雲海に浮かんだ山々が綺麗だ。みな白く雪化粧をし始めた。
 そこから吹峠分岐までは広々とした登山道だ。最近知ったが、この道は六十里越の旧道のようだった。その道の上を動物達の足跡を追いながら歩いていく。積雪は足首くらいになっていた。
 吹峠分岐を過ぎると山道らしくなってくる。積雪は脛ぐらいまでになってきた。単独ゆえ、トップの交代要員はいない。体力を浪費しないためにゆっくりと歩くことを心がけた。
 突然携帯電話が鳴った。お客様からだ。後刻うかがうことにして電話を切る。約束の時間を逆算して撤退時刻を10時と決めた。この分だと鬼ガ面山頂までは行けないだろう。せめて南岳に立って絶景を見たい。
 雪の重みで曲がった木が所々で道をふさぐ。木をゆすって雪を落とすと木は元通りに起き上がる。
 少し絶壁のヘリを歩いて南岳にはタイムリミットぎりぎりの10時に着いた。
 とにかく絶景だ。目の前には浅草岳、そして、その右には飯豊連峰が遠くに白い姿を見せていた。
 会津側は相変わらず雲の海だ、その向こうに浮かぶのは那須の山々か、そして、村杉半島から会津駒までの山並みが続き、綺麗な三角の先が二つに割れたように見える燧ケ岳。その右に平ガ岳、荒沢岳、越後三山、手前は毛猛山塊の毛猛岳、中岳、百字ガ岳、太郎助山・・・遠くに米山も霞んで見える。
 みなそれぞれ白く雪化粧だ。
 ザックからビールを取り出し、荷物の軽量化と心の軽量化を図る為に一気に飲み干した。(行動中に取った水分はこれだけだった。)
 仕事が入ったためゆっくりしてはいられない。下山にかかった。
 電波塔付近で一人の登山者とすれ違った。それ以外は山は貸切だった。
 朝ざわついていたブナ林はすっかり静かになっていた。木の枝についていたエビのシッポはきれいに落ちていた。
 峠付近は相変わらず濃い霧の中。
 工事用の重機の音が鳴り響く中、登山口に着いた。

 青い空と白い山。また、そんな季節がやってきた。
 
 

南岳より見た浅草岳 南岳より見た、荒沢岳、越後三山。
手前は毛猛山、中岳、百字が岳、太郎助山。
その更に左手前は、前毛猛山。
六十里越を雲海の切れ端が越えていくのが分かる。

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