白根山

雪上技術訓練

2004年4月4日、豊栄山岳会9名

 毎年春になると行われている豊栄山岳会の雪上技術訓練。
 これまでは主に小林会長とベテラン会員服部さんが担当して行われてきたが、訓練の方法などで私としての考えがあり、今年の山行計画を決める会議で私が担当として名乗り出た。
 例年は読図とピッケルワークの練習のみであるが、私の考えは読図訓練は机上訓練から行った方がいいと考え、また、ロープワークを知らない会員が多いので、訓練の中にロープワークを取り入れようと考えていた。
 そして、標高は1000に足らない低山ではあるが、山頂付近に訓練に適当な広い斜面があり、展望の利く稜線の登山道が続き読図の実習にはもってこいの下田村の白根山を訓練場所に選んだ。

 訓練当日、豊栄のメンバーは豊栄中央公民館に5時に集合してもらい、私は直接下田村の登山口で合流した。登山口は下田村カヌーパークの看板があるところの反対側から入っていく親沢林道の入口だ。
 林道は鎖が張ってあって先へは進めない。その手前に車を置いた。
 メンバーは準備会で地形図に磁北線と登るルートを記入してあり、この日は机上で予習してきたことを実地で確認する方法で読図の訓練を進めた。
 杉林を抜け最初の沢が林道を横切るところで地形図を出してもらった。沢沿いの道は周囲のピークが見えないため、枝沢の出合ごとに地形図を出して現在地を確認する必要があると教えた。
 次の沢の流入地点でも同様に地形図を出してもらい、取り付く尾根の特徴を地形図から読み取って、見える範囲の尾根を見て取り付く尾根を特定する。しかし、この時は特定したことが間違いないかどうかの判断材料も地形図から読み取ることを教えた。谷底では視界が限られているので、このように断定することは出来ず、仮定の上での行動になる。
 この場合の取り付く尾根の確認材料は取り付き地点付近に流入する沢だ。
 実際の登山道はその沢の手前より入り、沢を渡って尾根に取り付く。
 杉林の急登を抜け、視界が開けたところで対岸の烏帽子岳が磁北からどのような角度で見えるかで現在地を特定する方法を確認した。
 そして、またしばらく登ったところで同様の確認をした。
 稜線に近づくと雪が解けたばかりなのだろう、道は滑りやすくみな四苦八苦して登っていった。
 稜線に出たところからは粟ケ岳が雄大な姿を見せるはずなのだが、この日はあいにくガスの中だった。この辺りからはようやく雪の上の歩きとなる。
 ここでは、現在地の特定方法と、進むべき進路の方角をコンパスと地形図を使ってやってみることを実習した。
 稜線ではピークごとに止まり、分岐する尾根などでピークを確認する方法や、地形図から判断されるこれから進む道の地形の変化の予測などを実習した。
 急な登りでキックステップの練習をした。キックステップでの登りは膝を折って後ろに軽く蹴り上げ、つま先をまっすぐ前に向けて振り子の感覚で蹴り込む。腰は引かないこと、体が左右にぶれないこと、足場を水平に作ることを確認した。雪は適度にやわらかく、訓練にはちょうどよかった。
 また、地形図から急登が予想されるときはあらかじめその標高差を読み取っておけば、つらい急登のペース配分が出来ることを実習した。
 曇り空から小雪が舞い始めた。
 山頂へはほぼ予定通りの11時頃に到着した。一旦テントを張って昼食とした。

 昼食後、山頂の北東側斜面でロープワークなどの訓練を行うことにした。
 雪は緩んでいるがアイゼン歩行の練習もかねて全員にアイゼンを装着してもらった。アイゼンのトラブルは山行中よくあることだ、雪が緩んでいるとはいえ雪上技術訓練でアイゼンの使い方をマスターしておけば、本番のときに役立つと考えていた。
 立木の生えている緩い斜面でロープワークの練習。全員にエイト環を使って確保を体験してもらった。アンカーとしての確保とトップロープの時の確保の両方を実習した。
 そして、プルージックでの登りの練習。
 全員が練習した後は、やや急な斜面でピッケルを使った滑落停止の練習。こちらは最近入会した人以外は経験があるので簡単に説明した後、繰り返し練習してもらった。雪が緩んでいたので思うように制動が利かなかったが、滑落するときは頭から落ちずに足から落ちれば助かる可能性が高くなることを覚えてもらった。

 2時間たっぷり練習した後に山頂のテントを撤収して下山開始。
 新人に下りのキックステップの方法を教えた。
 周囲はすっかりガスに包まれた。
 尾根から離れるところでコンパスを使って進行方向を示す実習をした。その辺りでは雪が雨に変わっていた。
 滑りやすい登山道の下山は大変だった。何度か転倒してようやく降り立った。

 山岳会として技術の講習に力を入れるべきなのは当たり前であるが、今後も機会を設けてこのような技術訓練を行う計画だ。その時はもっと多数の人に参加してもらいたいと思った。
 でも、今回参加した方からは有意義な訓練だったとお褒めの言葉をいただいた。

緩い斜面でロープを使った確保の訓練 落ちる役も必要です

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