大荒川支流広手沢遡行〜赤安沢下降
五頭山
クマに遭遇
2004年8月7日、単独
コースタイム
6:05魚止の滝駐車場発-(魚止の滝を左から越えてから登山道に出る)-6:37花崗岩製の堰堤-6:55広手沢出合-8:12広手越-8:25五ノ峰着8:35発-9:10赤安山-(赤安沢下降)-10:45大荒川合流-10:55駐車場着
なんとか仕事がやりくりできたので手近な五頭連峰の沢を一つ登ることにした。単独なので厳しい沢は行けないし仕事の電話がかかってくるかもしれないことを考えると9時頃には稜線に出たい、西小倉沢にも惹かれるが早く稜線に出られる広手沢を選んだ。インターネットで検索するといくつか記録があり、簡単な沢のようだ。
魚止の滝登山口の駐車場に車を止め、登山道のある部分も大荒川の本流沿いを歩こうと魚止の滝の左壁に取り付いた。ところがへつって越えるにも結構悪く簡単にあきらめ登山道に上がった。
山葵沢を過ぎると登山道は左の尾根に上がっていく、道標には廃道と書いてあるがそのまま沢沿いの道を進んだ。道ははっきりしている、エノクラ沢を過ぎてその先の堰堤のところで大荒川に降りるように付いていた。この堰堤はなんと花崗岩を四角く切って積上げた立派なものだった。しかし、堰堤にはバックウォーターは無く、もうその役割を終えている。
大荒川本流は水量も多く迫力がある。ゴルジュのところで早速胸まで水に漬かって進んだ。
これから進む広手沢もその先の西小倉沢も越後の山旅には登山道として紹介されている。かつては道があったのか?
小広手沢出合を過ぎ、次の沢が広手沢だ。本流に立派な滝がかかっていた。
大荒川本流の渓相 |
広手沢に入ると水量はずっと減るが、今年通っている沢は水量の少ない沢ばかりだったので、これだけ水量があれば気分は上々だ。
沢は小滝が次々と現れ簡単に登れるので楽しく歩ける。初心者にはちょうど良いかもしれない。
左からトイ状の布滝が落ちるのが見えた。落差は10mくらいだろうか。
相変わらず沢は小滝とナメと小さいゴーロのくり返しだ。
5mくらいの滝を越え日の差し込むゴーロに出たとき、左手前方に黒い動物を発見。すぐにクマだと分かった。距離は10m離れているだろうか、体をゆすりながら草を噛んでいる。こちらの存在を知らせようと「オーイ」と叫んで両手を上げた。クマはすぐに気づきこちらを見た。クマは下るのが苦手なはずだ。沢床に居る私めがけて襲っては来ないだろう。このチャンスに写真を撮ろうとカメラを取り出しているうちに山の斜面を駆け上っていった。私は思わず「おーい、待てよー」と叫んだがデジカメの電源が入る頃には見えなくなってしまった。
それにしても、猿やカモシカは「オーイ」と呼ぶと少し距離を置くが見えなくなるまで逃げることなんて無い。クマは一目散に見えないところまで逃げていった。彼は人間がとても恐いのだろう。クマは有害獣なんかじゃない、森の住人だ。彼らの住みかに足を踏み入れているのは我々人間の方なんだ。
正面が支流で左が本流の二又を過ぎると再び小滝の連続となった。源頭近くになっても水はなかなか涸れない。しかし、沢には流木の量が増えてきた。流木が沢をうずめて伏流のようになっているところさえある。こんな源頭に多量の流木があるのは先日の豪雨の影響だろうか・・・
水が少なくなってからの二又を左に行けば五ノ峰だが、早く登山道に出るために右へ進む。
水が涸れてからも大した藪こぎは無く登山道に飛び出した。
五ノ峰がすぐなので五ノ峰に向かう。
五ノ峰に着き持ってきたビールで一人乾杯をした。
広手沢の滝、滝はすべて直登可能だ。 |
下山は登山道をそのまま下ってもいいが、時間があれば沢を下るつもりでいた。下るのにいい沢は砂倉沢かなと思い進んでいったらうっかり赤安山まで来てしまった。砂倉沢は赤安山手前より下る。ちょっと戻ればいいのだが、簡単に方針を変更し赤安沢を下ることにした。
赤安山を少し下り標高540m付近から沢に向かった。降り始めはブナ林で藪こぎはない。すぐにヒドに乗り右手から小沢を合わせると水が流れ始めた。
赤安沢は地形図で見る限りそれほど厳しい沢だと思っていなかった。ところがそれはとんだ思い違いであった。
下るにつれて水量が増えてくると滝が現れ始めた。そしてすぐ、10mの直滝が現れた。持っているロープは30m折り返しで使うと15mしか降りられない。ところがV字の谷の底で支点になる木が無い。コケの生える滝の左壁をそろりそろりと下った。
次の滝も10mある何とか流木で支点を取れそうだったので懸垂で下った。
そして、次の滝はと見おろすと20mくらい落差がある。周囲はクライムダウン出来そうに無い。下のほうに流木が滝に寄りかかっていた。支点の木はちょうどいいのがある。捨て縄も必要ない。15mを懸垂で降りて最後は流木頼りに降りられるかと考えた。ザイルを投げた。なんとか流木まで届いた。懸垂15m+流木頼りの下降5mで降りた。
次の滝がすごかった落差は30mはあるかもしれない。しかし、ゴルジュ地形になっていないところなので急な藪斜面をクライムダウンできる。どうやら二又になっているところのようだ。藪斜面をへつって行って隣の沢に下りて下った。
滝はそろそろ終わりかと思っていたがそうは問屋が卸さない、またまだ滝が続く。
再び懸垂で降りなければならない滝が現れた。落差は10mくらいか。支点はすこしへつった先にしっかりした潅木があった。ザックをおいてザイルを咥えて慎重にへつり、捨て縄を木に付けて咥えているザイルの末端を通し、再びへつりながら滝上に戻った。一人だから危険なへつりも確保してくれる人がいない。持ってきたシュリンゲは3本、あと残り一本だ。
滝は大荒川に合流するまで息つくまもなく現れた。短いけど内容の濃い沢だった。今回は下ったが、登るのも面白いかもしれない。大きな滝も30mの滝以外は確保者が居れば登れそうな滝だった。
大荒川に下り、堰堤を巻き、次の滝は高巻き、魚止の滝はへつり気味に降りた。
魚止の滝の下流で家族連れが水遊びをしていた。
赤安沢20mの滝。ロープが届かず下の流木を頼って降りた。 流木のところでロープの結びを解き、ハーネスに付けて ロープを引きずりながら流木に頼って降りた。 |
赤安沢30mの滝。大きすぎて写真に納まりません。 写真右の藪斜面をへつって支流に降りた。 |