内ノ倉川支流七滝沢

二王子岳

2004年8月29日、吉田、バク

コースタイム
6:30杉滝岩発-7:25七滝沢出合-15:15二本木山北西側-15:37二王子岳着16:00発-18:20二王子神社着

 新発田市の焼峰山山頂より二王子岳を望むと、二王子山頂よりいくつもの滝を掛けながら一筋の沢が流れ落ちているのが見える。これが七滝沢だ。滝の姿は遠くから見ても迫力があり焼峰の山頂までその音が届いている。
 この日は谷川連峰の沢を予定していたが、大型の台風が接近しており谷川連峰は悪天候が予想されたため、この七滝沢に転進することになった。

 豊栄の道の駅でバクさんと合流し2台の車で下山予定地の二王子神社へ向かう。朝焼けの空に浮かぶ飯豊連峰の稜線がきれいだ。
 二王子神社に私の車を置き入山口の内ノ倉ダム奥の杉滝岩へ向かう。
 杉滝岩の川を挟んで反対側の駐車スペースに車を置いて内ノ倉川沿いの林道を歩き出した。
 林道は杉林の中で見通しが悪い。地形図で破線になっているところも車の通れるだけの道幅の道が続いているのでうっかり七滝沢の出合を通り過ぎると悪いと思い、伊蔵沢手前より内ノ倉川に下りた。
 しかし、内ノ倉川本流はさすがに水量が多く、右に左に渡渉しながら進むのは大変だ。結局しばらく歩いた後再び林道に上がった。
 杉林の中からでも対岸の尾根の形状をよく見れば出合を見落とすことはない。七滝沢出合手前で内ノ倉川に再び降り、巨岩を越えながら七滝沢出合に着いた。ここまで歩き始めてから55分、少々遅れたけど許容範囲だろう。
 七滝沢に入ると巨岩のゴーロが続く、登ったり降りたりのくり返しでなかなか進むのに大変だ。
 最初の滝は2段5m。瀞の向こうに滝がかかっている。バクさんが早速泳ぎだしたが、2段目の滝が越えられず戻ってきた。左岸を高巻くが登山道並みの踏み跡が出来ていた。
 またしばらく巨岩のゴーロが続く、沢は直線で沢が左にカーブしているところまで見えるのだが、巨岩を登ったり降りたりでなかなか前に進まない。そんな渓相に飽きた頃に滝が現れた。今度は二人して釜を泳いで取り付いて越えた。ただ、泳ぐと途端に体力を消耗するし、冷えて足が攣りやすくなる。案の定足がピクピクいい始めたので連瀑の下で休憩とした。
 沢が左にカーブするところから連瀑帯が始まる。最初の滝の左岸のへつりから始まるが、藪の中に踏み跡が伸びていたので導かれるままに高巻きに入った。
 小沢を横切り小尾根を踏み跡に導かれるままに登っていく。途中から連瀑が望めるが、その迫力はすごいもんだ。登れる滝は登りたいと思ってきたが、まとめて巻き上がることに方針を変えた。目に見える最後の滝の高さの右岸に松ノ木が見えたので、あの松の高さを高巻きの目標とした。ところが踏み跡に導かれるままに登っていくが、目標地点の高さに来たが沢から遠く離れてしまい。また、間に沢があるのでトラバースに困難だ。足元の踏み跡もどうも薄くなってきた。人気の沢で踏み跡の無い巻きは考えられない。参考までに持ってきた遡行図を見ると、すぐに2本目の小沢を渡っている事が分かり戻ることにした。でも、せっかく登ったのに分かるところまで戻っては稼いだ高度がもったいない、そこで、小沢に降りて踏み跡があると思われる尾根に上がったら、予想通り踏み跡があった、あとは踏み跡に導かれるままに連瀑帯を高巻いた。この高巻きに40分を要してしまった。この連瀑帯は地形図に「七滝」の表記のある部分だ。

巻き道の途中から見た七滝の連瀑


 沢に下りてからも迫力ある滝が次々に現れる。特に難しい滝は無く、みな直登で越えていった。
 地形図に七滝の次に滝の印のあるところに差し掛かった。手元の資料には7段130mとある。水量、落差ともにものすごい迫力だ。手元の資料では左岸をまとめて巻きあがっているが、出来るだけ直登しようと相棒のバクさんと直登のルートを読んだ。
 一段目の滝は左からへつりながら取り付き左壁を登った。ザイルを出すべきかなと思ったが、ハーケンを打ちながら登るのも面倒だし足場はずっとありそうだしで、先に上がって上からザイルを投げるつもりで登っていった。しかし、バクさんも後に続いて登ってきた。最後だけバクさんにお助け紐を出したが、二人で確保なしで登ってしまった。それから次々に現れる滝を二人で協議しながら登った。すべてノーザイルだ。ノーザイルは時間短縮にはなるが安全面から見ると危険な行為だ。連瀑帯を越えた後、ふたりで「やっぱあそこは出すべきだったなぁ」と反省した。7段の滝のうち完全に巻いたのは2つ、それも、直登に近いコースで巻いた。

7段130mの連瀑の途中


 次の4段60mの滝はとても登れそうに無く、まとめて左岸から巻いた。踏み後があったが足場は余りよくなかった。その巻き道の最後の部分、足場のない土壁を登ったところにザックが置かれてあった。先日この七滝沢で滑落骨折事故があったことは新聞で知っていた。その人のものだろうか、回収すれば相当な重量を担がねばならないので、そのままにしてきた。翌日、新発田警察署にこのことを電話で連絡したら早速遭難した当事者に連絡を取ってくださり、予想通りその遭難者のザックだということが分かった。
 それから二つばかり滝を越えると渓相は一変し穏やかな川原状に変わった。連瀑が続いていたときは下山はヘッデン覚悟だなと言っていたが、渓相が穏やかになると地形図を見ても歩く速度が上がるのが分かる。適当な川原で昼食とした。
 渓相が穏やかになると気持ちも楽になる。流れの中には岩魚の魚影が確認できた。
 右と左から支流が流入するところによく使われているテン場があった。川原の一段高くなったところに焚き火の跡がある。最高のテン場だろう。一度この沢で泊まって焚き火の夜を過ごしてみたいと思った。
 この沢でエスケープする場合はこの場所から左から流入する沢に入れば鳥居峠に至るだろう。
 

渓相は穏やかになる


 相変わらず穏やかな渓が続き、きれいなナメや渕が次々と現れ心が癒される。
 6mヒョナグリ滝は泳いで左壁を登ったが、バクさんが簡単に登ったのをみて私が次に続くが取り付きがよくわからない。よくわからないといってもそのままでは流される。結局足と手で突っ張って水面まで体を持ち上げ何とか取り付けた。
 きれいな渓相が次々と現れ写真を撮りながら進んだら、バクさんにかなり離されてしまった。とにかく美しい景色の連続だ。日帰りで来るにはもったいない沢なのだ。
 また、瀞場が現れた。バクさんは早速泳ぐ体制だ。だが、どう見ても奥にある小滝は取り付けそうもない。よって彼は私に先にへつっていって上からロープを投げてくれという。私は泳ぐと疲れるし体は冷えるのでなるべく泳ぎたくない、よって、リクエストに答えるべく左岸をへつって滝上に立った。バクさんが泳いで滝下に来たところでロープを投げるが、腰からみの体制をとる前にロープにテンションがかかった。仕方ないので手に巻いたが、ロープが手に食い込んで痛い。バクさんも痛がる私の姿を見て結局戻り、左岸をへつってきた。今度ロープを投げるときは先に腰に絡めてから投げることにしようと思った。
 いきなり17mの滝が立ちはだかるが、右壁を簡単に越えられる。
 そして、3段10mの三ツ釜の滝は撮影ポイントだ。とにかく美しい。

瀞を泳ぐバクさん 三ツ釜の滝


 深い瀞場の奥にかかる小滝の右壁にロープが垂れ下がっていた。バクさんが右壁に沿って泳いで行きロープを頼りに足場に上がった。その姿を見て私も後を追うが、ロープはバクさんが握ったままその先をへつっている。私はロープを頼ろうとしたがこれでは使えず、水の浮力と腕の力で這い上がった。特にロープが無くても難しい場面ではなかった。
 1:1の二又は左にビニール紐の目印があるが我々は二王子岳山頂近くに突き上げる右に進路を取った。
 ここまで、地形図と資料の遡行図を見ながら登ってきた。現在地の特定はほぼ間違いないはずだ。ところが5mトイ状の滝を突っ張りながら越えると二又になった。右又からは4mほどの滝を掛けて入っている、左又はゴーロ状だが水量が極端に少ない。これまでの読図が間違いなければ左が進路だ。しかし、右からの方が明らかに水量が多い。見た目では1:3で右又の方が水量が勝っている。でも、私は自らの読図を信じて左が進路と思っていた。地形図とコンパスを出してみる。特徴あるピークでも見えればいいのだが、二王子の山頂近くは緩やかな稜線ではっきりと特定できない。バクさんはどうみても水量がこれだけ違えば右だという。これまでも思い込みでよく進路を間違っていた。心境としては水量の少ない方に進みたくない。結果、間違っても大差ないと判断し右に入った。
 少し上るとペットボトルなどのゴミが落ちていて人が入った形跡があった。そのときはやっぱりこちらが正解だと思っていた。
 

水量が減ってきたが滝はまだまだ現れる。


 水量がだんだん減ってきて藪っぽくなり始めた。ふと振り返ると越後平野が見えた。その瞬間やっぱり間違ったと感じた。これまでは振り返ると焼峰の稜線が見えていて、沢は時折カーブはするものの、焼峰が視界から消えるはずは無いのだ。すぐにコンパスを取り出した。案の定真東に進んでいる。入った沢は特定できたので周囲の地形から現在地を特定した。二本木山の方向に向かっているが、この先の二又を左に進まなければ登山道には出ない。読みどおり二又があり左に進む。
 沢はかなりの高さまで水が涸れることは無く、水が涸れたところからネマガリタケの藪に入ったが、水の流れた跡に沿っていけば藪こぎもそう大したことはない。藪の上に頭が出るので稜線がすぐ近くであることが分かる。奥の院跡に突き上げる本流の方は最後は草付きの急登のようだったので、余り急な登りでなかったこちらの方が結果的に楽に詰められたかもしれない。
 予想通り二本木山北西直下の稜線で登山道に出た。飯豊の稜線が低木越えに見える。
 そこから目前の二王子岳山頂を目指すが、日帰りとしては長い沢を詰め上げた足にはこのわずかな登山道歩きが辛かった。
 二王子山頂に上がったところで握手を交わし、ビールで乾杯した。
 久々の二王子岳山頂だ。思えば私の登山の始まりはこの二王子岳に登り山頂からの雄大な景色に感動したところから始まったのだ。懐かしい山の頂だ。飯豊の稜線の景色も相変わらずの迫力で我々に迫っている。
 しかし、もう夕刻は近い。明るいうちに下山したいのでゆっくりもしていられない。
 下山の道のりは長く感じた。二王子神社に着いた頃は既に暗くなり始めていた。

 七滝沢。厳しさと穏やかさとを併せ持った素晴らしい渓流だった。

二王子山頂にて

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