御神楽岳

豊栄山岳会、雪上技術訓練

L吉田 SL板垣 湯川 坂井 宮沢 中澤 山川 波多野 内山

 毎年4月上旬に行われる会の雪上技術訓練。今年は昨年に引き続いて私が担当することになった。
 訓練内容は、読図、アイゼン歩行、ピッケルワーク、ロープワークだ。
 今回は地形図から危険箇所を読み取ってその危険をどう回避するか予め予定するということを学んでもらおうと、雪崩の多発する御神楽岳室谷ルートを選んだ。

 室谷集落外れの林道分岐点より歩き出す。林道が途中まででも除雪されているつもりで来たのだが、今年は雪が多いせいかそれとも我々が来る時期が早かったのか、まだ全く除雪されていなかった。(前日インターネットで情報が入っていた)私が昨年来たときはセト沢に出合う手前まで除雪されていたのだ。
 室谷川にかかる橋のところで最初の読図講義。地形図をコンパスを使って現地の向きに合わせる作業を行うが、地形図を回さずコンパスを動かそうとするメンバーが相変わらず多い。室谷川の橋という立派な人工物で現在地が特定できているので、地形図の向きさえ合えば実際の風景が地形図どおりに見えてくる。
 橋を渡って林道をショートカットするが、ずぼずぼもぐるのでわかんを装着した。例年同じ時期に下越の山で開催している雪上技術訓練だが、わかんを装着したのは珍しい、それだけ今年は遅くまで雪が降り雪が多いということだ。

 林道が大きくカーブしてセト沢沿いを進むところになると雪崩の危険地帯だ。予め準備会で地形図に印をつけたものをメンバーに渡してあった。
 崖の印の下を通る所、マークが無くても等高線の間隔が狭く急斜面の下を通る所は雪崩の危険地帯だ。そういう箇所ではなくても林道は山肌を削って作っているため、地形図で分からない危険箇所も存在する。
 事前に地形図でエスケープルートを想定しておき、現地の状況で判断するという講習を準備会で行っていた。
 林道のカーブの地点でメンバーに待機してもらい偵察に向かう。崖の上には不安定な雪の塊は見られない。よって、林道をそのまま進むことにした。ストックを手にしている人はピッケルに持ち替えてもらい、デブリの通過の注意点を話して通過する。この箇所は林道上に積もったデブリの通過なので、滑れば数十メートルしたの沢に転落する。わかんの爪が必ず全て雪に食い込む足場に足を乗せなければならない。幸い前日に多くの登山者が通過したようで、しっかりした足場が出来ていた。(昨年単独で来たときは一歩の足場が無くバランスを崩さないように担いでいたスキーを下ろし危険箇所を通過した後にロープで引き寄せていた)
 地形図上で想定してできる雪崩の危険箇所はこの崖の印の下とセト沢の支流を渡った後の355mピーク直下の斜面、そして、登山口付近とその奥しばらくに渡ってだ。
 この地形図での想定に対してエスケープルートを予め考えておき、現地の状況を見て判断を下す。積雪期の行動の重要事項だ。これを今回の訓練の主眼においていた。
 355mピーク直下の部分は少しはなれたところから危険箇所全体の雪の付き具合を確認できる。不安定な雪の塊があるかどうかを確認し、危ないところは間隔をあけて足早に通過するよう指示を出した。
 そして、355mピークを回り込むように通過した後、比較的斜度の緩いところから尾根に取り付いた。前日のトレースは夏道沿いを進んでいる。

 尾根の取り付きからは前日のトレースが無いためずぼずぼもぐる、トップを交代しながら進んだ。要所要所で地形図を出してもらい、地形図と実際の地形の変化を確認しながら進む。
 尾根が痩せてきて藪が出始めた。尾根の巾が広いところは残雪があるが、痩せ尾根は早めに雪が落ちるため藪こぎになりやすい。これも地形図上で判断できると机上訓練で講義していた。
 尾根の途中の雪の無いところで進行を停止し、昼食とした。ちょっと危なっかしいところではあるが、雪の上よりは寒くないと考えた。しかし、多くのメンバーが休む場合は雪があっても広く平らな場所の方がよかったらしい。
 朝降っていた雨もすっかり上がり、青空が覗いている。

 登ってきた尾根を戻って適当な場所で技術訓練を行った。
 まずはロープワーク、ハーネスを普段から着用しないメンバーがほとんどなので、今回はロープをもやい結びで体に結び付けて確保する方法で練習した。(現在クライミング界ではもやい結びはあまり使用されていないが、初心者に結び方を教えるのはこれがかんたんで良いので、もやい結びを教授した)
 確保方法はピッケルを雪に埋めてその上に立ち、ピッケルに近いところに付けたカラピナにロープを通して肩がらみで確保するする「スタンディングアックスビレー」の練習をした。
 メンバー全員に確保を体験してもらった。雪の上なので落ち役が実際に落ちて止める事までやる。(夏だったら怪我してしまうが、雪山訓練はこれが出来ていい)
 ただ、標高が低いところの上、気温が上がって雪が腐りアイゼン歩行の練習はイメージトレーニングになってしまった。また、ピッケルを使った滑落停止の訓練は形を覚えてもらい程度になった。

 下山は往路を引き返す。このルートに来るといつも汲んでくる林道脇の清水を水筒に詰めた、家での水割りを楽しみだ。

 反省点は多々あった。しかし、皆に技術を教えることも私にとっては勉強になる。
 


ロープを使った確保の練習

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