2005年4月10日、単独

コースタイム
6:45安座発-7:53山頂着8:03発-9:15安座着

 2万5千図「安座」(あざ)の右上の一角に、山の標高はそれほど高くないが、岩の印が集中している箇所がある。その一角にあるのが竜ケ岳だ。しかし、その山の下を磐越道のトンネルが走り、その名前は「龍ケ嶽トンネル」となっている。漢字の字体の差でしかないのだが、岩のごつごつした山のイメージを字で表しているのであれば、竜ケ岳より龍ケ嶽だ。よって以後龍ケ嶽と書かせていただくことにする。

 西会津の国道49号のセブンイレブンのある信号より入り安座を目指す。それまで覆っていた靄が一気に晴れて龍ケ嶽の山容が目に飛び込んできた。奇岩乱立とは行かないが山肌に多くのスラブを抱え、食い込んだ谷を多くの雪が埋めていた。
 安座集落に入り安座川にかかる橋を渡って右折し龍ケ嶽方向に進むが、すぐに最後の民家がありそこで除雪は終了していた。民家の前に車をとめるわけには行かず、安座川の橋のたもとに戻って車を停めた。
 
 天気は快晴、朝から全く寒さを感じない。
 最後の民家の前を過ぎると杉林に入り緩く谷底へ降りる。一旦広く見渡せる場所に行き龍ケ嶽の山容をみて登るルートを探した。重登山靴ではスラブは登れない。藪が稜線まで続くところが安全でいい。稜線の東端に近いところをある程度の高さまではデブリを利用して登り、途中から小尾根に乗って藪の中を進むことにした。
 デブリの雪は硬くキックステップが利かない。出来るだけ平らなところに足を乗せ高度を稼ぐ。青白い岩塔を過ぎたあたりで藪に入り小尾根に乗った。
 小尾根にはうっすらと踏み跡があった。獣道か?と思いよく見ると古い鉈目がある。どうやら人間の踏み跡らしい。
 稜線に乗るとまた新たな踏み跡が合流して登山道と変わらなくなった。新しい鉈目も見える。
 時々残雪を利用しながら高度を上げていく。北側の谷には多くの雪が谷を埋めているが、谷上部はスラブとなった山肌が出ている。
 北東から登る尾根が合わさるあたりに岩があった。試しに登ろうとしてみたが重登山靴では足場が乏しく、少し登ってあきらめ岩の基部を巻いた。
 最後は残雪をキックステップで登って山頂に達した。
 山頂からは大展望が広がっていた。大倉(だいくら)山から木地夜鷹山、日向倉山の稜線が目を引く、大倉山へ登る緩やかな尾根は山スキーによさそうだ。
 白く輝く飯豊連峰も見えていたが、春霞で霞んでいた。霞がかかっていなければ会津の名山達も見えていることだろう。
 持ってきたチューハイで一人乾杯し下山の途に就いた。当初は往路を戻るつもりでいたが、少し冒険してみようと別のルートをとることにした。
 地形図で安全に下れるルートを見極める。
 西隣のピークから派生している尾根を下る。稜線上の道はさらに先まで続いていた。
 下降する尾根も上のほうは踏み跡があったが、わずかに下るとそれも消え、潅木藪の下山路となった。
 上のほうから様子を見て、ある程度下ったら尾根東側の谷に下りてデブリを歩くつもりでいた。ところが、目指す箇所に至る前に西側にも小さい雪渓が現れ、そちらに下降路を変更した。
 雪道の下山は早い、時折グリセードを楽しみながら一気に下降する。
 ところが、谷底に降りる少し手前で雪が切れ、スラブの斜面になった。渓流シューズであれば足場を選びながら下れる斜度であるが、ビブラム底の重登山靴で下れる場面ではない。藪に捉まりながらトラバースをくり返し、太い木のあるところでザックの中からザイルと下降器具を取り出していつでも使える体制をとった。
 しかし、下降器は使わずに何とか谷底に降り立った。
 谷底に降りる少し前、対岸のスラブの雪が轟音とともに崩れ落ちた。地形図を見る限り、谷は広いのでルートを誤らなければ雪崩の危険性は薄いと判断していたが、谷底に達しているデブリがいくつも有る。その上、南側のスラブについている雪が不安定だ。
 不安定な雪が張り付いている箇所を通過した瞬間、ザーッという音がしたので振り返ると、岩のような雪の塊が落ちていくのが見えた。ちょっと時間がずれていたら危険な目に遭っていたかもしれない。自らの強運に感謝した。
 谷は次第に広くなり歩きやすくなった。龍ケ嶽のスラブを見上げる。圧巻だ。そして、杉林に入って民家の前を通過して車のところに戻ってきた。
 
車に戻ってきたら村のおばあさんに声を掛けられた。
「龍ケ嶽に登って来たよ」
「雪がいっぺぇあったろぉ」
龍ケ嶽は荒々しい山であるか安座はのどかな山里だった。

短い時間ではあるが変化に富んだ山旅をすることが出来た。

龍ケ嶽を見上げる 谷底に降り立つと、雪崩の危険地帯だった。
通過する寸前に雪崩が発生、通過直後にも
岩のような雪の塊が落ちてきた
写真左が南側、そちらの雪に亀裂が入っている。

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