高井峠

2005年5月8日、単独

コースタイム
7:30荒沢集落発-7:55川熊沢出合-9:00稜線-9:30高井峠着9:55発-10:47川熊沢出合-11:10荒沢集落着

 峠は里と里をつなぐ大事な道だ。多くの峠道は出来るだけ労力を省くため稜線の低いところを越えて反対側の里に降りた。
 ところが、その稜線の一番高い部分を越えている峠がある、それがこの度訪れた高井峠だ。
 つまり「峠」という名前がついている立派な「山」なのだ。
 羽賀一蔵氏が著した「越後佐渡の峠を歩く」を見ると、実川沿いにある小荒集落から会津へ抜ける大事な峠道があったという。地形図を眺めると小荒から高井峠までは一本の尾根が続いている。しかし、東側の峠道はいったいどこにあったのだろう。
 今回はこの本に記載されている沢沿いのルートをたどって峠と名の付いた山に登ることにした。

 荒沢集落の外れの林道の分岐点にバリケードが置いてあり、そこから歩き出した。分岐には万治峠を案内する看板が設置してある。7時半頃だった。
 馬取川沿いの林道を進む。
 「越後佐渡の峠を歩く」には概念図が掲載されていない、地形図と文書を睨み合わせてルートを見極めておいた。地形図上に水田の印のあるところに左から流入する沢が目指す沢だと思う。本流はまっすぐ高井峠に突き上げている。途中から高井峠のやや東の稜線にまっすぐ突き上げている尾根がある。
 しかし、山奥の里の水田の印なんてあてにならない、また、本に書かれてあった造林小屋もあてにならない。測量の後になくなっている事だってあるからだ。よって、沢の流入を見るたびに地形図を出して現在地を特定しながら歩いた。
 やがて目指す沢の出合に着いた。水田は杉が植えられてなくなっていた。造林小屋もない。この地点が間違いなければこの先で林道が対岸に渡るはずなのだが、確認して後戻りするのも面倒なので、沢床に降りて支流の沢に入っていった。
 すぐに堰堤があった。これは地形図に記されていないが新しく出来たのであろう。堰堤に「川熊沢」の文字を見つけたので、この沢は川熊沢と言うに違いない。
 沢はわりと広く明るい日差しが沢床まで届いている。最近まで雪が埋めていたのだろう倒れた笹が敷き詰められた状態になっている。
 山肌に残雪が残る頃は左右から水が流れ込み支流と勘違いしやすい。やがて1:1の二又に来たとき、これが目指す二又と勘違いしてしまった。
 二又の右又には4mくらいの滝がかかっている。間の尾根には踏み跡がついている。踏み跡に導かれるままに一段上がってみる小さい杉の植林帯になっていた。
 もうこれが目指す尾根と思い込んでいるので、踏み跡がはっきりしなくなったがかまわず登っていった。
 あたりはブナの原生林になった。うるさい藪が全くない代わりに踏み跡も判然としない。
 ちょっと日が差し込むところにはイワウチワがかわいい花を咲かせ、ところどころムラサキヤシオがちらほら咲き始めていた。
 羽賀さんの著書には「遠慮会釈のない直登だ」と書いてあるが、そんなに急な登りでもない。ま、羽賀さんにとってみればこの程度で急と感じるのだろう(ご本人様ごめんなさい)と思っていた。でも、登山道のような踏み跡はない。いつの間にか自然に帰したのかと思っていた。
 小ピークで現在地を特定する。思い込みとは恐ろしいものでその小ピークが本来のルートの小ピークに見えてくる。ただ、地形図には登る尾根に針葉樹の印があるのだが、この尾根は全く針葉樹がない、それも短い期間に植生が変わったのだなと、思い込んでしまった。
 それまであるかないか分からなかった踏み跡もはっきり現れだした。それに、「平成九年」と刻まれたブナの切り付けまで見つけてしまい、もう完全に正しいルートと思い込んでしまった。
 やがて稜線に出た。ここから左わずかで高井峠のはずだった。ところが左は下降している。樹間から見ると北の方角に高いピークが見える。ここで初めて間違った尾根を登ってきたことに気づいた。
 コンパスで高く見えるピークの位置を確認する。ほぼ真北にピークがある。よって、登った地点は高井峠と大石山の間の稜線だと特定した。
 今までの風景を思い出しながら登ってきたルートを特定しようとした。1:1の二又がある沢は川熊沢以外に考えられず、よって現在地は724mピークと仮定した。この仮定が正しければ目の前の高いピークが高井峠ということになる。稜線上の踏み跡もはっきりしている。とりあえず目の前のピークを目指して進むことにした。しかし、間違って戻ってくることも考えて、分岐にはオレンジ布を付けておいた。
 稜線の踏み跡ははっきりしているのであせりはない。ブナの巨木が心を癒してくれる。
 ピークに出るとそこには三角点の標石があった。周囲にそれ以上の高い山はない、間違いなく高井峠山頂だ。9時半頃だったと思う。
 山頂からの展望は素晴らしい、蒜場山から烏帽子山を経て大日岳に続く稜線が間近に見える。そこから飯豊本山を経て種蒔山の稜線も白く輝いている。
 遠くには磐梯山や博士山、志津倉山も確認できた。
 30分ほど景色を楽しんで下山の途に付いた。
 今度は間違えないように注意しながら進んだ。
 万治峠に続く道を東へ進み、分岐はすぐ分かった。急な道が右へ下がっている。
 確かに急な道で、尾根はキタゴヨウが連なって生えていた。
 沢床に降りると二又は明るく開けていて、3:2で左又の方が水量が多い。
 先ほど間違えた二又はすぐだった。二又の間の踏み跡は、右又にかかる滝の巻き道だったのだ。あとはもと来た道を戻るだけだ。
 林道に上がり、数人のハイカーとすれ違い、荒沢集落に戻った。11時半頃だったと思う。

 気になっていた山に上れてよかったが、もうちょっと慎重に読図しなければならないという事を学んだ山行だった。

緑の点線のルートを登った 大日岳 烏帽子山

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