白毛門沢

白毛門


2005年8月21日

豊栄山岳会沢登り技術訓練

CL中山、SL高橋、大屋、吉田

コースタイム
7:00駐車場発-7:05東黒沢入渓-7:40白毛門沢出合-11:25白毛門山頂着12:22発-14:10東黒沢の橋着

 今年の山岳会の沢登り技術訓練は谷川連峰の一角群馬県の白毛門に突き上げる人気の沢、白毛門沢で行われることになった。
 前日まで天気予報が二転三転し最終的な行き先は当日早朝に決めることになっていたが、皆さんの普段からの行いが良いせいか第一候補の白毛門沢で大丈夫ということになり一路関越道を南下する。
 私個人は毎年盆明けの日曜に谷川連峰の沢を計画しているが、台風の接近などにより、毎年北へ転進していた。計画通り谷川連峰に向かったのは今回が初めてだ。
 私の雨男パワーを帳消しにしてくれるメンバーがいたようである。

 早朝4時に新潟市内で集合して南へ向かう。
 6時には水上ICを降りたのでリーダーの提案で一の倉沢を眺めに行くことになった。ただ、あいにく濃いガスで全容を見ることは出来なかった。谷川連峰の県境稜線だけは終日ガスがかかっていた。
 白毛門登山道入口の駐車場に車を止めて歩き出す。他にも数パーティー沢の装備の人たちがいた。
 東黒沢左岸の道を進み堰堤を越えたところから入渓した。しかし、すぐに対岸に踏み跡があることが分かり、踏み後沿いに前進し再び入渓した。
 再入渓後まもなくナメが現れた。水量もあり美しい渓流美に心が躍る。
 そして、東黒沢名物ハナゲの滝だ。段々状のナメ滝で難しいところは無い。

東黒沢のハナゲの滝


 白毛門沢出合は本流支流双方きれいなナメがかかっていた。東黒沢のナメ中央を掛け声をかけて突破する。久々のパーティー沢登りに美しい渓、心は有頂天だ。しかし、まだまだ技術が未熟な大屋さんにヒヨイヒョイ歩く姿を真似されると怪我の元だ。次から次へと現れる滝に夢中になりながらも心を引き締めることにした。
 中山リーダーはあまり先行することなくパーティー全体に気を配っているのがよくわかる。
 滝は全部直登の方針だったが、5mほどの滝に手が出ず、左壁上をへつり気味にまいた。直登出来なかったのはこの滝だけだった。水量が少なければ水線左から登れそうだった。
 

中山リーダーは常に気配りを忘れない 軽快に滝を直登する高橋さん


 核心部手前で小休止、見上げる滝の上部に先行パーティーの姿が見えた。
 いくつかの階段状に登れる滝を過ぎると大迫力の滝が現れた。ガイドブックには落差15mとある名物タラタラのセンだ。この付近の沢ではセンとはスラブの意味があるが、スラブ滝というには傾斜がきつく見える。しかし、ガイドブックの記述では15mとあるが目測で30mあるように見えた。
 登るルートを目で追う、最初の取り付きが難しそうだがそれさえ越えれば階段状に見え難なく登れると思った。私がリードで直登することにした。
 しかし、ここで私は判断ミスをした。普段の沢登りより今回は軽装できていたのだ。また、メンバーからカラピナやシュリンゲを借りて登攀を開始するといったことも忘れてしまった。登り始めて気づくのだが、私はシュリンゲ2本とカラピナ3個という確保道具で30mの滝を直登することになった。おまけにハーケン、ハンマーも持っていない。頼りは残置ハーケンとブッシュだ。調子に乗りすぎてのうっかりミスだ。もう落ちることは許されない。
 残置ハーケンは半分も岩に食い込んでいなかった。いざというとき私の体重は支えられないだろう、しかし、見るとすぐ近くにもう一本ハーケンが打たれてあり、下のハーケンにはシュリンゲをかけ、上のハーケンにはカラピナを直にかけて対応した。
 下から見ると階段状だが、岩のフェイスは大きくその上濡れていて滑りやすい、小さくスタンスを求めるクライミングの基本パターンが使えない。岩の隙間に生えている草をつかんでホールドとする場面もあり緊張した。
 左側のブッシュに2本目のシュリンゲを掛け支点とした。この時ザックにお助け紐があることに気づき、最終地点のビレイはこれで行うことにした。
 支点をとってブッシュの中を登っていたとき、下で確保していた中山さんからロープの残量が無いと声がかかった。周囲に信頼できる木が無く、先ほどの支点を取った場所に戻って中山さんを確保することにした。足場のない泥斜面をブッシュを握りながら戻り、このわずかな時間で腕が張ってしまった。
 しっかりと支点のシュリンゲを掛けなおして中山さんに合図を送る。高橋さんや大屋さんの姿は無い、どうやら巻いたようだ。後続パーティーが我々の登攀を見守っている。
 中山さんも私と同じところで苦労していた。その後、つるべで中山さんがリードして後半の滝を登った。彼は水流寄りにルートを取っていた。私は「俺の立っているところに来てブッシュ沿いの方が優しいぞ」と声をかけるが、彼のこだわりはとめられず、なんとか水流に近いルートを登っていった。
 中山さんが行ってからしばらくしてロープを引っ張っていることで登りきったことを知った。声をかけても聞こえない。命を守ってくれた細い潅木からロープをはずし、私はブッシュ沿いの階段状の岩を苦労するなく登らせてもらった。
 タラタラのセンを登り切ると巻き道から上がっていた高橋さんと大屋さんが待っていた。

タラタラのセン
ガイドブックでは15mとあるが、目測で30mはありそうだ。
私と中山さんだけ左壁を直登するが、岩のフェイスが大きくて
苦労した。
上部は左のブッシュ沿いを登った。
沢の中央に鎮座している巨岩


 その後の大きなナメで先行パーティーに追いついた。巨岩が沢の中央に鎮座している面白い光景だ。
 沢の傾斜が緩みしばらくは平凡な渓相となった。ジジ岩ババ岩が見え始めてきた。
 沢床に日差しが差し込む明るい渓だ。振り返ると上州の山並みが見える。
 支流の流入の度に水量が減っていく。登りの傾斜も増していった。
 白毛門山頂に続く白い岩の筋を目で追い、その筋がつながっているところにルートを見出していった。
 水量が減り、やがてなくなると笹薮の中に踏み跡が現れた。人気の沢なのだ皆が歩くところには踏み跡が出来る。
 ほぼドンピシャと白毛門の山頂に踏み跡は導いてくれた。
 ちょうど昼時、山頂で賑やかなランチタイムとなった。谷川岳は相変わらずガスの中だ。上州の山並みも多くは雲にかかっている。でも、沢登りに山頂からのパノラマはおまけのようなもの、ルート踏破の達成感の方が大きいのだ。

源頭部のスラブ 白毛門山頂にて



 下山は登山道を降りた。
 下山後、宝川温泉に行く道中、車の直前に小熊が飛び出してきた。山中の林道で熊に会ったことはあるが、こんなアスファルトの道路に熊が出るなんて初めてだ。中山さんのハンドル裁きで事なきを得たが、山は熊にとって棲みにくくなってきているのであろうか・・・

 宝川温泉はせせらぎの音に心が癒される。美渓の余韻に浸りつつ、湯船に体をしずめていた。
 

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