大境山(途中撤退)

雪上技術訓練

2006年4月9日、豊栄山岳会13名

(コースタイムの記録はとっていません)

 毎年4月上旬に行われる豊栄山岳会の雪上技術訓練、私が担当するようになって今回で3回目になった。
 当初、東蒲原の棒掛山を予定していたが、この付近の雪消えが早く、雪が消えても登山道があり、また残雪たっぷりの大境山に変更することにした。

 豊栄中央公民館で全員集合して登山口の山形県小国町中田山アを目指す。夜が明けてきて小国が近づくにつれ小雨がぱらつき始めた。
 登山口の目印は酒屋だ、車を止めて降りる頃には雨は本降りとなっていた。天気予報は回復に向かうことになっている。すぐにやむだろうと思っていた。

 私の訓練山行は読図の訓練をあわせて行っている。事前の準備会で机上での訓練も施している。
 まずは現在地を特定できる場所で地形図を出し、コンパスで向きを合わせる作業を行った。登山口では道路が小沢を横切り、その沢の奥に堰堤が見える。もちろん地形図には酒屋の表記はない。
 そこで地形図を出して向きを合わせるのだが・・・・毎年参加している人でもこれがなかなか出来ない。地形図を回すのにコンパスを回してしまう。その時の私の決めせりふ「あなたがどんなに力持ちでも、地球の向きは変えられませんよ」
 雪で埋まった田んぼを南に向かい、最初の沢に出合った所から沢沿いに入る。沢は雪で埋まっていた。沢の二股より沢の間の尾根を登る。読図の訓練のため少し歩いては立ち止まりして歩くため、リーダーの私が先頭を歩かねばならない。雪は少し緩くわかんをつけない足で足首までもぐる。さすがに一人でトップを歩き続けるのは辛い。1時間くらいしてから先頭を交替しながら登るように切り替えた。
 読図・・・細かく説明しているのだけど、わかっただろうか。基本は等高線から地形の変化を読み、頭の中でイメージした景色を現地の景色とあわせるのだけど。読図が不得手な人はイメージマップが出来ないのかもしれない。
 また、現在地のわかる地点から地形図を見る。現在地のわからなくなったところで初めて地形図を見たところで、変な思い込みが入るとかえって危険だ。

 登るにつれて雨から雪に変わってきた。
 尾根が痩せてきて、雪が割れている。急な登りで女性会員は苦労している。ピッケルの使っていない人にはピッケルに持ち替えるように指示した。
 ビッケルは急斜面の手がかりに威力を発揮する。雪に刺すだけでなく、ピックの部分を岩に掛けたり木に掛けたりする事だって出来る。
 県境稜線に出ると風が強くなってきた。県境稜線は一面の大雪原だ。帰路確保用の標識旗を短い間隔で立てた。
 しかし、そこから少し歩いて撤退を決めた。山頂を踏むのが目的ならば前進してもいいのだが、完全に冬山の状態。読図講習しても耳に入らないだろう。また、技術訓練するには風の当たらない場所がいい。予定では山頂付近で技術訓練を行うことにしていたが、少し下がったところに場所を切り替えるべきと思った。
 よって、撤退。「前進やめたー、降りるよー」と言ってさっさと下山開始した。
 標高800m付近で小尾根が分かれるところがあり、その辺りに出来ていた雪庇の陰で食事が出来そうだ。そこまで降りてきてその上で訓練を実施することにした。
 
 まずはロープを使った確保の訓練。立木に支点を取ってのカラピナに半マスト結びで確保をする訓練を行った。ロープ2本で2班に分れて訓練した。
 その次は肩からみ懸垂下降。ベテラン会員でさえ肩からみの懸垂下降が初めての経験の方もいる。器具がなくてもロープさえあれば出来る肩からみ懸垂下降は覚えておくべきだと思う。
 2時間近く訓練しただろうか。その後、雪庇の陰で昼食とした。
 訓練中も順番待ちで体が冷え、昼食中も時折舞う粉雪を浴びて体は冷え切った。
 午後からピッケルワークの訓練をやろうと思っていたが、とりあえず歩いて体を温めようと下山を開始した。

 最初から急な斜面を下る、下りの時の歩き方を講義した。
 恐いと横向いたり腰を引いたりしがちだが、歩を進めるときに重心もしっかり前に移動して、上から足を下ろす。その時につま先を上げてかかとで雪面にガツッと食い込ませれば歩くごとにしっかりした足場が出来上がる。
 腰を引けば足が着地したときに重心が後ろなので尻餅をつきやすい。尻餅をつけばそのまま滑っていく可能性もあり危険だ。
 また、横を向いて降りれば、靴のサイドエッジは雪面に食い込みにくく、しっかりした足場が出来ない。また、横を向いているときはバランスを保ちにくい。
 また、急な斜面の下りでは先行者のトレースを追うよりも、新雪のところを歩いた方が、足が雪面に食い込みやすく安心して下りられる。
 それでも急なところは先程講習した内容の実践で、確保したり、懸垂下降したりしながら下降した。
 下るにつれて雪はやみ、下界の景色が見えるようになって来た。

 急な斜面を下りきると、あとは目印の旗などを回収しながら一気に下山した。

 天候の条件が悪い中での雪上技術訓練。有意義だったかどうか。
 訓練した内容を身に付けるためには訓練が終わってからの本人の意識が重要だということを下山後に伝達して訓練を終えた。


下山時、肩がらみ懸垂下降を実践する(撮影、坂井さん)

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