あとどれくらいですか?


2002年6月20日記


 山頂からの下山途中
「あとどれくらいで山頂ですか」
と、聞かれることが度々ある。
山頂が間近ならともかく、半分も登っていないところで聞かれると、この人は山を楽しんでいないなと思ってしまう。だいたい相手の力量が分かるはずもなく、どうしても答えはいい加減なものになってしまう。
 同じ内容の会話でも、同行のパーティーで話される場合は問題ないと思う。お互いの力量を知っているし、コースについての検討をした結果、あとどれくらいという会話になるはずだから悪いことではない。
 でも、すれ違う人に「どれくらいですか」と聞いたところで、的確な返事が返ってくるはずはないのだ。それを聞いてしまうということは、その人は山登りが苦しく、山頂に行けば苦しい登りから開放されるということしか考えないで登っている人なのだと思う。それでは登山が楽しくならない。


 登山は山頂に到達することが目的ではあるが、長いアプローチの場合は最初から目標を山頂にだけに置いていると、気分が滅入ってしまうものだ。
「山頂まであと5時間だ、がんばろう」と言われても
「まだ、5時間も歩くのかぁ」とため息が出てしまう。
でも、目標地点を細かく切っておいて、その目標に到達したらその次の目標、その目標に到達したらまたその次と、小さい目標を次々と到達していきながら登ると、目標到達する喜びが生まれて、長い道のりも苦にならなくなる。
 私はパーティーのメンバーに初心者や力量が劣る人がいる場合は、あらかじめ目標を細かく区切っておいて目標地点ごとに一息入れるようにしている。そうすると、小さな目標を一つ到達したという満足感が生まれて、プラス思考になると思っている。人間プラス思考になると強いものだ。

 整備された登山道を歩くとおせっかいな道標に出会うことがある。「山頂まで○時間」と書かれたものだ。山頂まで10分くらいの所にあるものならともかく、「山頂まで4時間」と書かれていると、「まだまだだなあ」と言う気になってしまう。
 しかし、「○合目」と書かれた標識の存在はありがたい、山頂までの道のりを10に区切っているのでその一つ一つが小さな目標になり、合目の標識に出会うと小さな達成感を味わうことが出来る。それに引き換え「○時間」と言う標識は、歩く速さは人それぞれなので、その標識に書かれた時間より早く歩ける人にはいいが、足の遅い人には「俺っておそいなあ」という気分になるのではないだろうか、マイナス思考になっては山は面白くない。

 私は最近では合目の標識とは無縁のところを歩くことが多いので、地図上に目標地点の目安をつけておいて、地図を見ながら小さい目標達成を積み重ねて歩くようにしている。
 とにかく、プラス思考で山には臨みたい、それにはあらかじめ小さい目標地点を自分で設定しておいて、すれ違う人に「あとどれくらいですか」なんて聞かないことだ。
 

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