巻機山山名考


上越国境の名山巻機山。それは、機織姫の言い伝えのある優しい形をした山塊の総称だ。
その中で、1967mの標高の最高点が地形図で巻機山という名称になっており、多くのガイドブックもそのピークを巻機山、または、巻機山本峰として紹介されている。
しかし、そこは里からはっきりとわかる山頂ではなく、山麓の清水の集落からは前巻機に隠れてみることが出来ない。
伝説まで生む山はやはり里から見えなくてはなら無いはずだ。
また、巻機山の山頂標識はそのピークのそばの御機屋と呼ばれるところにある。御機屋に行けばそこが最高点でないことは誰でもわかる。
藤島玄著「越後の山旅」下巻に「山と渓谷」15号の藤田嘉衛の文書の引用があった。興味深いことが書かれているのでその抜粋を紹介しよう。
また、深田久弥は「日本百名山」の巻機山の項にて、江戸時代の鈴木牧之著「北越雪譜」の破目(われめき)山は巻機山前衛の天狗岩だと言う説を述べている。そして、現在の地形図に載っている割引岳は「われめき」を「わりびき」と聞き誤り、また更に誤ってその背後の山にその名をつけたとしている。
この事も大変興味深い。
ともあれ、巻機山は名山は違いない。しかし、、麓から眺めると近くに魚沼を代表する八海山の個性に圧倒されて、その存在を見落としがちであるが、登ってみて初めてあの山頂の優雅さに触れたとき、名山という事を認識するに違いない。

登川奥の名峰と沢の名称に就いて

                      藤田嘉衛
巻機山と牛が岳
(前略)
 巻機山縁起の事から考えて、下の六日町、塩沢町辺りから順次長崎、姥沢と聞き正していくと、疑問の巻機山はどうしても「神字(かんじ)入りノ頭」ということになった。沢口と蟹沢の間に落口を開くのが神字ノ沢で、これを源へ辿った割引山の一つ北の峰(約1880m)が、祠のある巻機山に当る。上越線石打駅付近から眺めると、金城山の右に聳える屋根型の長い大日向尾根の右奥の峰が此山で、大日向尾根を西に引いた懐にある「黒岩ノクラ」が第一の目標となる。
(後略)
牛ガ岳
(前略)
 その牛の名称の起こりは、従来「山容牛背に似たり」とする山容説が多いが。これは誤りで此地方には比較的稀らしい残雪による命名である。型は文字通り残雪そのものの白牛型と、残雪に隅取られて出来た黒牛型で八十八夜の種蒔ごろ現われ五十沢、五日町方面から眺めた姿が最も顕著なものである。
(後略)

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