単独行


 私の登山は単独行が多い。
 パーティーを組んでの登山も好きだが、これだけ登山の回数が増えると、単独の割合が必然的に高くなる。特に山岳会に入る前は、山行のほとんどが単独だった。
 単独行の良いところはなんといってもその気楽さだ。
 出かけたいときに出発し、休みたいときに休む。気分が乗らなければ簡単に中止できる。パーティー登山のときは、一度約束した山は簡単に中止できない。
 歩きも自分のペースで歩ける。きれいな花があれば立ち止まり、小鳥のさえずりに耳を傾け、歌を歌いながら歩いても迷惑をかける相手はいない。急なところで大声で気合をかけながら登ることだって出来る。(ただし、人の多い山では出来にくいが)
 静かな山頂で得られる大展望は自分だけのものだ。
 しかし、単独行のデメリットも多い。荷物を担ぐのは自分ひとり。泊まりの時は夜が寂しく長い。そして、もしもの時に救助を呼んでくれる人がいない。
 だからそれなりに自分を鍛え、知恵を働かせることが出来なければ単独山行はただの我儘山行になってしまう。
 気楽とはいえ計画はより綿密に立てなければならない。読図力も必要だ。一般登山道を歩くにしても、なんでもないところで道に迷うことだってあるかもしれない。パーティーであれば誰かが気づくことだって、単独だと自分が気づかなければ誰も気づく人はいない。
 荷物は軽量化に努める。美味しい物を食べたいが、食料は軽量化への一番の勝負どころだ。道中の水場の有る無しは事前に情報を集めておく。それによって持っていく水の量も変わる。
 そして、遭難に対する準備や心構えも無くてはいけない。山岳保険に入ることはもちろんではあるが、保険は遭難を防いではくれない。
 もしもの時に救助を要請してくれるのは留守を守る家族であったり、所属会であったりするはずだ。出かける前に計画書を家族や所属会に置いていけば、帰宅予定に帰宅していなければ警察に届け出るはずだ。そのとき、どこを探したらいいか分からないなんてことの無いようにしたい。登山口の登山届も捜索の鍵になる。
 それよりも、自ら遭難を起こさない心構えが出来ているかが大切だ。地形図で現在地の確認が出来るか、危険予知が出来るか、危機回避は出来るか、怪我の応急手当が自分で出来るか。
 私は単独で山に入るときはかなり臆病になっている。
 今後も楽しい単独登山を続けるためにも、自らを鍛えて行きたいものである。

(99年夏、越後三山縦走の時、中ノ岳で撮った写真。
石の上にカメラを乗せて、セルフタイマーで撮影した。
この時は、駒ケ岳から八海山の間は誰とも会わなかった。泊まりの山小屋も一人だった。)

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